研究課題/領域番号 |
26430073
|
研究機関 | 前橋工科大学 |
研究代表者 |
石川 保幸 前橋工科大学, 工学部, 准教授 (90346320)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 連合性長期記憶 / ニューロプシン / シナプス / 海馬 / 短期記憶 / シナプス・タギング / 長期記憶 / 行動 |
研究実績の概要 |
さまざまな経験により記憶が形成されるとき、特定のシナプスの情報伝達効率が変化することで、個別の回路が構築され、記憶が保持されると考えられている。その変化が数分から数時間で消失する場合、短期記憶となる。しかし、強烈な経験や何度も同じ経験をすると、情報伝達効率の変化は数日以上の長期にわたり維持され、長期記憶が形成される。このとき強烈な経験刺激と弱い経験刺激が組合わさることにより、通常長くは記憶されないような短期記憶の内容を長く覚え続けられる連合性長期記憶が形成される。連合性長期記憶は、電気生理学的レベルの他、個体レベルでの記憶行動実験でも起きる事が検証されつつある。しかしながら、どのような記憶や学習に関与するのか、またその分子機構については良く分かっていないのが現状である。本研究課題は動物個体を用い連合性長期記憶の機構解明を目的とした。連合性長期記憶の行動実験系の構築は概ね順調に進んでおり、これまでのところ比較的弱いフットショックによる嫌悪刺激や新奇物体認識課題による短期記憶を形成させ、次に短期記憶課題の前後に新奇環境刺激を加えることで連合性長期記憶の誘導を試みた。それぞれ野生型マウスによる検討において連合性長期記憶の誘導が可能であることを確認した。次にシナプス連合可塑性に関与するシナプス分子・ニューロプシン欠損マウスをもちいて同様の実験を行っている。比較的弱いフットショックによる嫌悪刺激と新奇環境刺激の組み合わせによる連合性長期記憶の誘導は起きないことが明らかにすることができ、カニューレによる海馬へのニューロプシン注入実験によりその障害が部分的に回復したことを見いだした(日本神経化学大会、日本生理学会)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在のところニューロプシン欠損マウスにおいて比較的弱いフットショックによる嫌悪刺激と新奇環境刺激の組み合わせによる連合性長期記憶の誘導は起きないことが明らかにすることができ、カニューレによる海馬へのニューロプシン注入実験によりその障害が部分的に回復したことを見いだした(日本神経化学大会、日本生理学会)。しかしながら、最適な注入する量やタイミングの検討がまだであり今後実施予定である。また、当初予定していた新奇物体認識や新奇物体場所認識による行動課題はニューロプシン欠損マウスでの実施が遅れているため、進捗状況はやや遅れていると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
新奇物体・場所認識課題による短期記憶を形成させ、次に短期記憶課題の前後に新奇環境刺激を加えることで連合性長期記憶の誘導を野生型マウスで確認した。今後同様の課題によりニューロプシン欠損マウスでどのようになるのかを検討する。 ニューロプシン注入実験の結果部分的な回復が観察されたが最適条件でない可能性があるため海馬実質へのニューロプシンのカニューレ注入実験の最適化を実施する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
実験実施状況に遅れが出たため次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
実施予定のカニューレによる薬液注入実験などに使用予定である。
|