研究課題
さまざまな経験により記憶が形成されるとき、特定のシナプスの情報伝達効率が変化することで、個別の回路が構築され、記憶が保持されると考えられている。その変化が数分から数時間で消失する場合、短期記憶となる。しかし、強烈な経験や何度も同じ経験をすると、情報伝達効率の変化は数日以上の長期にわたり維持され、長期記憶が形成される。このとき強烈な経験刺激と弱い経験刺激が組合わさることにより、通常長くは記憶されないような短期記憶の内容を長く覚え続けられる連合性長期記憶が形成される。しかしながら、どのような記憶や学習に関与するのか、またその分子機構については良く分かっていないのが現状である。本研究課題は動物個体を用い連合性長期記憶の機構解明を目的とした。これまでのところ比較的弱いフットショックによる嫌悪刺激や新奇物体認識課題による短期記憶を形成させ、次に短期記憶課題の前後に新奇環境刺激を加えることで連合性長期記憶の誘導を試みた。それぞれ野生型マウスによる検討において連合性長期記憶の誘導が可能であることを確認した。次にシナプス連合可塑性に関与するシナプス分子・ニューロプシン欠損マウスをもちいて同様の実験を行っている。比較的弱いフットショックによる嫌悪刺激と新奇環境刺激の組み合わせによる連合性長期記憶の誘導は起きないことが明らかにすることができ、カニューレによる海馬へのニューロプシン注入実験によりその障害が部分的に回復したことを見いだした。さらには空間物質認識課題による連合性長期記憶課題を行ったところニューロプシン欠損マウスにおいても野生型マウスと同様の連合性長期記憶を誘導することができた(日本神経化学大会、日本生理学会)。このことは、ニューロプシン依存的・非依存的連合性長期記憶のメカニズムが存在することを示唆している。
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Int J Mol Sci.
巻: 18 ページ: -
10.3390/ijms18051042.
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