研究課題/領域番号 |
26430075
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
久保 健一郎 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (20348791)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | リーリン / 接着分子 / 大脳皮質 / 発生 |
研究実績の概要 |
本年度は、細胞間の接着に関わる分子に注目して、それらの分子がリーリンによってどのように制御されて細胞凝集を生じるのかを明らかにしようと試みた。Nカドヘリンやインテグリンは移動中の神経細胞に発現して移動に影響を及ぼすことが報告されている。このうち、特にNカドヘリンついては、その機能阻害によって神経細胞移動が障害されることを見いだした。このNカドヘリンが神経細胞が移動を終えてリーリンに触れる部位で高度の発現が見られることが明らかになったので、その分布の詳細な解析を行った。この際に、リーリン受容体であるVLDLRとApoER2の分布もあわせて解析して明らかにし、報告した。さらに、リーリン刺激の前後でどのような制御を受けるのかを確認するため、リーリン刺激の前後で活性や分布の変化が起こるかどうか、培養細胞表面のNカドヘリン分布やNカドヘリン発現量を、免疫染色法やWesternブロット法を用いて解析を行った。 また、子宮内胎児電気穿孔法を用いたワイルトダイプのNカドヘリンの過剰発現とドミナントネガティブ体のNカドヘリンの過剰発現を行って両者の表現形を比較したほか、RNAiを用いたノックダウンを行い、層構造形成に与える影響を明らかにした。また、発生中マウス脳内に、子宮内胎児電気穿孔法によるリーリン発現プラスミドを導入してリーリンの強制発現を行うと、特徴的な神経細胞の凝集構造がリーリンによって形成されるが、その際に、ワイルトダイプのNカドヘリンやドミナントネガティブ体のNカドヘリンの強制発現、RNAiを用いたNカドヘリンのノックダウンを組み合わせて行い、リーリンによる神経細胞の凝集構造に与える変化を解明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画で1年目の目標にあげた項目について解析が進んだほか、一部は2年目以降に計画した項目についての解析に着手している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に得られた結果について再現性の確認やより詳細に条件を振った解析を進める。加えて、当初2年目の研究計画で予定していた通り、Nカドヘリン以外の分子がリーリンの下流で細胞接着を制御しているかどうかを明らかにするため、その候補分子の探索や機能解析に着手する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初想定していたよりも少ない実験動物数で所見を得ることができ、また当初は観察のために必要な抗体を見出すために、多種類の抗体を購入して解析を進める予定であったが、免疫染色を行う際に特異的な抗体を早い段階で見いだしたため、まずその抗体を中心に解析をすすめたことにより、物品費が減少した。
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次年度使用額の使用計画 |
ウエスタンブロット法を用いた解析や免疫沈降法を用いた解析を進める際に必要な抗体を見出すため、昨年度購入しなかった多種類の抗体を購入するために物品費を使用して、条件検討を行う。また、培養やin vivoでの解析に必要な実験動物数を当初の見積もりよりも増やして十分なN数を確保し、条件検討や詳細な解析を進める。
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