研究課題
オリゴデンドロサイト(OL)・ミエリン鞘は、脂質に富む組織である。本研究において、我々は、組織標本中の脂質分布密度を高解像度で検出できるマトリックス支援レーザー脱離イオン化法を用いた質量分析イメージングを使い、硫酸化糖脂質(スルファチド)の発現を指標に、胎生期OL前駆体細胞から髄鞘形成に至るまでのOL分化・成熟過程を解析した。マウス胎生期のOL前駆体細胞発生母地では、C18-OH が優位に検出され、これらは、脊髄中心管近傍から延髄、橋へとOL発生に伴って局在する様子を捉えられた。スルファチドは、胎生期のOL系譜決定臨界点からミエリン鞘構築に至るまでのOL分化過程を通じて合成されていることが明らかになった。さらに、胎生期OL前駆体細胞は、脂肪酸の短いC16 スルファチドとC18 スルファチドを産生するが、発生とともに長い脂肪酸をもつC22スルファチドやC24 スルファチドが加わることを明らかにした。また、成獣脳では様々な脂肪酸をもつスルファチドが利用されていた。そこで、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS) を用いて、高質量・高面分解能解析をおこなったところ、未脳梁近傍領域では、コレステロールシグナルが髄鞘部に、ペプチド断片から得られたCNOイオンシグナルが、細胞体に捉えられた。一方で、スルファチドバリアントシグナルは、コレステロールが検出された髄鞘がコンパクトに束ねられた領域ではなく、皮質から脳梁へむかう帯状束領域のやや髄鞘の粗になる部分に検出され、ドット状の局在を示し、それぞれは共存しなかった。個々のスルファチドバリアントは、クラスターを形成し、それぞれ違う固有領域を支配していることを示唆する結果を得た。
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Journal of Neurochemistry
巻: 140(3) ページ: 435-450
10.1111