昨年度までの本研究では、ヒトβ3チューブリン変異により微小管がキネシン、特に KIF21A や KIF5B と相互作用できなくなることが原因となって、神経軸索の正常な伸長が阻害され、3型の先天性外眼筋線維症における神経軸索伸長の異常につながることを明らかにしてきた。得られた結果をこれまでの知見と組み合わせると、キネシンと微小管の相互作用により微小管のダイナミクスが制御されており、そのダイナミクスの変化が神経軸索の伸長に重要であることが予想される。このような視点や問題を明らかにするために、レビュー論文としてこれまでの成果と研究分野を俯瞰した論文を執筆した(掲載確定)。これと並行して、チューブリンの変異やキネシンとの相互作用がどのように微小管のダイナミクスを制御しているかを理解することを目指し、精製した変異チューブリンやキネシンを用いて、微小管のダイナミクスを測定することを試みた。その結果、チューブリンの変異によって微小管の重合・脱重合のダイナミクスが変化することを明らかにすることかできた。更にその原因を明らかにするため、結晶構造解析を試み、幾つかの結果は得たが、重合ダイナミクスの変化を説明するための十分な成果が得られなかった。そのため、チューブリンへのヌクレオチドの結合状態の解析や、微小管の構造変化をクライオ電子顕微鏡を用いて詳しく解析することにより、チューブリンの変異がどのように微小管のダイナミクスの変化に結びつくのか、一定の成果を得た。この成果は論文として発表予定である(論文準備中)。
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