研究課題/領域番号 |
26430083
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
波平 昌一 独立行政法人産業技術総合研究所, バイオメディカル研究部門, 研究グループ長 (60379534)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | DNAメチル化 / 神経細胞 / 精神疾患 |
研究実績の概要 |
本研究では、神経細胞(ニューロン)特異的にDNA 化学修飾酵素を欠損又は過剰発現する申請者が開発した新規遺伝子改変マウスを実験材料として、ニューロンの発達と機能発現におけるDNA 化学修飾酵素の機能解析を行う。これにより、ニューロンのDNA化学修飾機構の破綻と精神疾患発症との関連を明示することを目的とする。 現在まで、本研究で使用する遺伝子改変マウスの作製に成功し、それらの解剖学的解析を実施するに至っている。解剖学的解析の結果、DNAメチル化酵素を過剰発現するマウスにおいて、記憶学習に必須な脳の海馬歯状回領域での神経新生が抑制されていることが分かった。現在、さらなる解剖学的解析と、分子生物学的解析にも着手している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
既にニューロン特異的DNMT酵素欠損マウスの作製は終えているので、本年度は、DNAメチル化酵素Dnmt1を過剰発現する遺伝子改変マウスの作製を目指して研究を実施してきた。Dnmt1遺伝子の導入を行ったいくつかの系統の第2世代において、免疫組織化学法により、DNMT1と融合させたGFPの発現が脳内のニューロンで確認することができた。さらに、これらのマウスの海馬歯状回の組織学的解析を行ったところ、成体での神経新生を担う神経細胞の数の減少と、新生ニューロンの減少が認められた。このことは、DNMT1過剰発現マウスの作製に成功していることと、その過剰発現が、海馬の神経新生を阻害することを示唆している。これらのことから、本年度の目標までは達成されているので、研究課題は概ね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ニューロンの数や細胞死の有無を詳細に検討するなど、遺伝子改変マウスの解剖学的解析を更に詳細に行い、脳組織の発達におけるDNA化学修飾酵素の役割を明らかにする。さらに、遺伝子発現解析や、エピジェネティクス修飾解析などの分子生物学的解析を実施し、ニューロンのゲノムDNAにおけるDNA化学修飾酵素の標的遺伝子・領域を同定する。また、行動学的解析にも着手し、精神疾患様の行動異常の有無を検討する。 これらの研究を実施することで、ゲノムDNA化学修飾機構の機能破綻と精神疾患発症との関連、及びその発症メカニズムを明示する。
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次年度使用額が生じた理由 |
遺伝子改変マウスの作製のための消耗品費に多くの費用が見込まれたが、実際には予定額を下回って作製を終えることが出来たため、その差額が未使用額として生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の生化学的実験の消耗品費として使用予定である。
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