研究課題/領域番号 |
26430087
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
小林 慎 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 非常勤講師 (10397664)
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研究分担者 |
幸田 尚 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 准教授 (60211893)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | non-coding RNA / 疾患モデル動物 |
研究実績の概要 |
我々が作製した、新規非コードRNAのKOマウスはヒト疾患に似た表現型を示す。本研究では、lncRNA KOマウスの解析を行うことにより疾患の分子機構を明らかにすることを目的とする。近年、哺乳類ではタンパク質をコードしない非コードRNA(non-coding RNA, ncRNA)が多量に転写されていることが分かってきた。この内200塩基以上の長いncRNA(long non-coding RNA, lncRNA)は,個体レベルで生理 機能が明らかになっているものは稀であり、その役割の解明が求められている状況である。本申請では、独自に作製したlncRNA KOマウスの表現型を解析することにより、lncRNAの発生、疾患の発症機構における機能を明らかにする。このノックアウトマウスを疾患モデルとしてヒトの疾患の原因究明に繋げたい。ヘテロKOマウス同士の交配実験を行い、表現型の特徴を明らかにした。さらにKOマウスの発生を遡り、異常は胎児期に出現することを明らかにすることにより、ヒト疾患の表現型との比較の準備が整いつつある。異常の観察は共焦点レーザー顕微鏡を持いて行い、詳細な細胞および組織部位の観察を可能にできる工夫を行っている。また、発生ステージを追いながらreal time PCR及び、fluorescence in situ hybridizationを用いてlncRNAの詳細な発現パターンの解析を行ない、lncRNAは発生初期から発現すること,更に細胞内での局在を突き止めた。さらにKOマウスの遺伝子発現を体系的に調べ、遺伝子発現レベルでの異常を検出することに成功した。これまで謎の多かったlncRNAの個体での生理機能の理解および、疾患モデルマウスとしての有用性を検討できる基盤が整った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交配実験が順調に進み、表現型の出現頻度の解析データが揃った。更に、表現型異常の時期を特定するための交配実験も順調に進んでおり、サンプルの確保が出来つつある。分子生物学的な解析に関しても、データが出始めており順調に進んでいる。免疫染色用のサンプルの確保も揃い始め、免疫染色のデータの収集が進み始めた。遺伝子発現の体系的解析結果も得られ、異常の本質に迫る手掛かりが得られた。
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今後の研究の推進方策 |
前年度から引き続いて、発生過程におけるlncRNAの発現パターンの詳細な解析を進めていく。個体の組織、細胞に限らず、今後は細胞内の局在をFISH(fluorescence in situ hybridization)を用いて解析していく予定である。また、サンプルが確保できなかった幾つかの免疫染色の実験については、サンプルの準備ができ次第、速やかに行えるよう、抗体の購入等の準備を整える。遺伝子発現の体系的解析結果も得られ、異常の本質に迫る手掛かりが得られた。現在最後の詰めの実験として、個体から細胞レベルでの解析に落とし込める細胞実験系を検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまでの解析により、注目していたエピジェネティック現象に異常があることを突き止めた。しかし当初の予想に反し、KOマウスの表現型に、別のノンコーディングRNAが関与していることが明らかになった。論文発表のためには、この現象の本質を見極めることが不可欠であり、2つのノンコーディングRNAの関連を調べる培養細胞の追加実験を実施する必要が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
培養細胞で2つのノンコーディングRNAの関係を調べるため、ノックダウン実験法でノンコーディングRNAの発現を抑えることにより、他方のRNAの発現にどのような影響が出るか評価する。
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