研究課題/領域番号 |
26430090
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
斉藤 美知子 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教 (40379558)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 糖尿病 / 小胞体ストレス / 小胞体ストレス応答 / インスリン |
研究実績の概要 |
小胞体ストレスセンサーのひとつであるIRE1αの膵β細胞における役割を解析するため、膵β細胞特異的にIRE1αを欠失させたマウス(IRE1α CKO)を作製し、その解析を行ったところ、16週齢くらいから血糖値の上昇が見られた。さらに、ATF6とのダブルノックアウトマウスを作製し、血糖値を調べたところ、シングルノックアウトマウスに比べ、さらに早い4週齢くらいから血糖値の上昇がみられた。 また、IRE1α RNase ドメインのflox マウスと膵β細胞で特異的にガン化を起こすマウスとの掛け合わせにより、IRE1α flox遺伝子を持った膵β細胞の株化に成功した。この細胞にアデノウイルスでCreを発現させることによりIRE1α RNase ドメインを欠失させた細胞を樹立した。この細胞を用いて、インスリン分泌、インスリンタンパク質の合成を調べたところ、RNaseドメインを欠失させない細胞と比べ、明らかにインスリン分泌量が低下し、細胞内のインスリンタンパク質の量も減っていることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の計画にあった、膵β細胞得意的にIRE1α のRNase ドメインを欠失したマウスとATF6 KOマウスを掛け合わせることによるATF6を全身で、IRE1αを膵β細胞で特異的に欠失したダブルノックアウトマウス(IRE1α-ATF6 DKO マウス)の作製は終了した。このマウスの血糖値を調べたところ生後4週以降、血糖値が高くなっていることがわかった。これは、IRE1α単独でノックアウトしたマウスよりも早い時期であった。また、IRE1αのRNase ドメインをloxPで囲んだfloxマウスと膵β細胞特異的にSV40 Large T antigenを発現しガン化させるようにしたマウスとを掛け合わせることにより、IRE1α flox遺伝子を持った膵β細胞株を作製した。これらの樹立した細胞において、アデノウイルスでCreを発現させることによってIRE1αのRNaseドメインを欠失させた。このIRE1α KO細胞を用いて小胞体関連遺伝子やタンパクのfoldingに関わる遺伝子の転写やタンパク合成がどのように変化しているのか解析中である。 マウスの表現型解析については、グルコース負荷による耐糖能試験はほぼ終了しているが、インスリン負荷試験、および組織学的解析が解析途中である。
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今後の研究の推進方策 |
IRE1α CKOマウス、IRE1α-ATF6 DKO マウスの作製は終了したため、今後それらマウスの各週齢の耐糖能試験、インスリン負荷試験を行う。さらに、解析途中である組織学的解析も引き続き行う予定である。マウスの個体差が大きいため、各週齢それぞれ5匹以上のマウスを用い、さらにホルモンの影響のない雄マウスのみを使用することを計画している。このため、マウスがそろうのに時間がかかり、細胞の解析と平行して行うことにより、細胞における詳細な実験を前倒しで行う予定である。 また、組織学的解析解析において、BrdUで染色された細胞がβ細胞であるかどうかがわかるように、抗インスリン抗体と同時染色をする必要があるが、核染色と細胞質染色の同時染色がうまく行かないため、この染色方法を確立する必要がある。連続切片を用いることによる解析も考慮に入れて解析を進める予定である。 各週齢での膵島の採取は順調に進んでいる。これらを用いて、転写量の変化をRT-PCRによって解析していく。またタンパク質レベルでの発現もWestern blotによって調べる予定である。 樹立した細胞を用い、アデノウイルスでCreを発現させることによってIRE1αのRNaseドメインを欠失させ、その細胞で小胞体関連遺伝子やタンパクのfoldingに関わる遺伝子の転写やタンパク合成がどのように変化しているのかも解析途中であるので、今年度も引き続いて行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
マウス飼育費が予定より大幅にかかり、その分旅費や消耗品を抑えたため、少しあまりが出た結果となった。
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次年度使用額の使用計画 |
マウス飼育費が少し抑えられる予定であること、逆に抗体、ELISAキットなどに予定以上の金額がかかることが判明したため、消耗品費に計上する予定である。
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