研究課題/領域番号 |
26430091
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
桑田 岳夫 熊本大学, エイズ学研究センター, 助教 (70346063)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | HIV / SIV / ワクチン |
研究実績の概要 |
近年、サブタイプを超えた多くのHIV-1株に有効な中和抗体として、いくつかの強力なBnAb(broadly neutralizing antibody, BnAb)がHIV-1感染患者から分離された。また、HIV-1ワクチンの有効性が確認された臨床試験RV144では、抗体の誘導がHIV-1感染防御に寄与していることが示唆された。これらのことは、効果的な抗体の誘導がHIV-1ワクチンにとって重要であることを示している。 本研究では、HIV感染の動物モデルであるSIV感染サルから分離した、SIV中和抗体としては初めてのBnAbであるB404の解析と、SIV感染サルで誘導されるB404類似抗体の解析を行う。本年度は、B404が認識する詳細なエピトープを決定するため、Env変異体を用いてB404中和活性に重要なアミノ酸残基の同定を試みた。これまでの構造解析の結果から、B404結合に重要であると推定されるアミノ酸残基をアラニンに置換した32種類のEnv点変異体をPCRによる変異導入によって作製し、これを用いて調整したシュードウイルスを用いてB404中和活性の解析を行った。その結果、4種類の変異株でB404中和活性の減少がみられ、6種類の変異株は感染性がなかった。今後、これらのEnv変異がB404結合に与える影響を解析していく。また、B404類似の祖先抗体の分離のため、これまでに分離されたB404類似抗体105クローンの塩基配列を基に、B404類似抗体に特異的なPCRプライマーを設計した。また、SIV非感染細胞や、SIV感染直後のリンパ節の細胞を採取してRNAを抽出し、逆転写酵素によってcDNAを合成した。今後、PCRによってB404類似抗体を増幅してライブラリを構築してB404類似の祖先抗体を分離していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に計画していた研究のうち、B404が認識するエピトープの解析については、Env点変異体の作成とB404中和活性の解析まで終了し、ほぼ予定通りに進んでいる。また、当初は平成27年度に予定していた糖鎖結合部位のEnv点変異体の解析も一部、前倒しして行っている。解析の結果、B404結合に影響を与えるアミノ酸変異を4種類同定できたが、その多くはB404とは異なるV1エピトープを認識するM318T抗体による中和にも影響を与えるため、Env構造全体が変化している可能性が示唆された。B404による中和に特異的に影響を及ぼす変異を同定できていないため、最終的な目的であるB404エピトープの同定には至っていない。 B404類似の祖先抗体の分離については、当初、SIV非感染サルから、B404と同じ抗体遺伝子、及び特異性をもつB404類似の祖先抗体を分離する予定であったが、新たにSIV感染サルの試料を得る機会を得たために計画を変更した。感染直後の未成熟なB404類似抗体が誘導されている時期のリンパ節細胞を分離し、解析のための準備が終わった段階である。計画変更のため、SIV非感染アカゲザルからの抗体ライブラリ作製まで進むことはできなかったが、B404類似抗体に特異的なPCRプライマーの準備はできており、SIV感染、非感染両方のサルからライブラリを作製する準備ができた段階である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度のEnv点変異体の解析では、B404結合に決定的に影響するアミノ酸部位は同定できなかった。この結果は、B404が直線的なエピトープを認識する抗体ではなく、Envの立体構造を認識していることと大きく関連していると考えられる。つまり、B404抗体とEnvの特定のアミノ酸間の強い結合ではなく、B404とEnvの立体構造に依存した結合であるため、Envの1箇所のアミノ酸変異があっても、構造が維持されていればB404の結合に大きな影響を与えない可能性がある。このため、Env点変異体の解析も継続するが、B404抗体とEnvの複合体の結晶構造解析も進めていくことにする。このために、EnvのN, C末端部分やVループを欠損した結晶構造解析用のEnv変異体を作成する。この変異体Envを精製し、B404との複合体の結晶を作成していく。 B404類似の祖先抗体の分離については、すでにライブラリを作製する準備ができているので、抗体ライブラリを作成し、Envを抗原としたバイオパニングによってB404類似の抗体分離を行っていく。分離したB404類似抗体の遺伝子解析や、結合、中和活性の解析を行い、成熟前から成熟早期のB404類似抗体の特徴をあきらかにしていく。この結果から、結合活性の上昇や交叉中和活性の獲得に重要な体細胞突然変異を同定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品の購入予定に若干の変更が生じたため
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次年度使用額の使用計画 |
本研究では多くの遺伝子組み換え、及び遺伝子解析を行うため、これに関連する大腸菌培養培地、各種の酵素やキット類を購入していく予定である。
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