研究課題
今年度は、新規にSIVsmH635FCを接種したアカゲザル6頭の感染初期から感染後1年までの経時的なリンパ節からライブラリを作成し、中和抗体の分離と解析を行った。これまでの研究では、SIVsmH635FC感染アカゲザルでは長いCDR3を持ち、VH3-33を使用した重鎖とラムダ軽鎖の使用が特徴的なB404類似抗体が高頻度に誘導されることが示唆されていた。しかしながら、新規SIVsmH635FC感染アカゲザルからは、B404と同じVH3-33を持つ中和抗体は分離されなかった。血漿の中和抗体価が高かった2頭の抗体遺伝子を解析したところ、1頭ではVH1-59, VH4-38、もう1頭ではVH1-53を重鎖として使用する中和抗体が多くを占めた。これらの重鎖の多くは、HIV/SIV感染で誘導される中和抗体に特徴的な18アミノ酸以上の長いCDR3を持っていた。また、1頭はカッパ軽鎖を持つ中和抗体がほとんどで、もう1頭ではカッパ軽鎖とラムダ軽鎖の両方の誘導がみられた。分離した抗体の5株のSIVに対する中和活性を調べたところ、接種ウイルスとそれに近縁なウイルスに対する中和活性は、感染後12週、24週に分離された抗体よりも51週に分離された抗体の方が高くなっていた。一方、接種ウイルスと遺伝的に大きく異なるSIV株に対する中和活性は、分離時期による違いがみられなかった。これらの結果は、新規SIVsmH635FC感染アカゲザルではB404類似抗体が誘導されておらず、B404類似抗体の誘導には宿主因子が大きく関与していることを示唆している。また、これらのサルでは感染による抗体の成熟が交差中和活性の上昇とは関連していないことが示された。
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Retrovirology
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