これまでPS2とTG2576を交配させたダブルトランスジェニックマウス、老化促進モデルマウス(SAM)、理化学研究所脳科学総合研究センターから導入したAPP<NL-G-F>マウスを用いてヘルペスウイルス潜伏感染下アルツハイマー病モデルに使用可能かどうかを検討してきた。いずれも潜伏感染モデルが構築可能であり、SAMP8を除いて感染2ヶ月後における脳内βアミロイドが上昇していた。Y字迷路についてはSAMP1を除いて感染群と非感染群との間に有意な認知機能の差を認め、その差はSAMP8で最も大きく認められた。いずれの試験も再活性化させた群と潜伏感染のみの群との間に有意な差は認められなかった。SAMではまた、感染後2ヶ月目にウイルスを再活性化させた群で脳内βアミロイド値および認知機能低下有意に抑制されることが分かった。ダブルトランスジェニックマウスとAPP<NL-G-F>マウス は2ヶ月で結果を得ることができ、さらにAPP<NL-G-F>マウスは複雑な交配が不要となるので非常に有用であると考えられた。正常老化のモデルとされるSAMP10マウスでは潜伏感染のみもしくはウイルス感染させなかった群との間に有意な差は認められず、潜 伏ヘルペスウイルスの再活性化に伴うアルツハイマー病の発症にはなんらかの病原因子の存在を必要とする可能性が考えられた。現在、潜伏ウイルスが再活性化する際に最初に起動する遺伝子の発現を抑制することによってウイルスの再活性化を抑制する試みを進めており、プラスミドレベルでは良好な結果を得た。さらに臨床応用を考えてアデノ随伴ウイルスを用いたシステムを構築中であるが、研究期間中に完成するには至らなかった。今後、システム構築を完成させ、今回確立したマウスモデルを用いて評価を続ける計画である。
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