研究課題
妊娠期に母獣が低タンパク食を与えられたマウスの仔においては離乳後に行動表現型の変容がみられるとともに、脳において特徴的な遺伝子の発現パターンを示すことが明らかになった。新生児の脳における遺伝子発現の変化に関して顕著な差は見られなかったが、成獣の脳の遺伝子発現とゲノムメチル化には標準食-低タンパク食群で明瞭な差が見られた。離乳後の雄個体に関して行動表現型解析を行ったところ、低タンパク食で行動表現型の差異 (物体探索、社会探索行動の減少)が認められた。また、発現およびメチル化に変化の見られた遺伝子群に関して、データベースを用いた機能アノテーションを行ったところ、転写因子および、嗅覚関連遺伝子等に変化が見られた。そこで、これらの遺伝子群に含まれる中で、行動表現型に関与することが予測されたRora、Ntrk2、Atxn2、Tgm3の各遺伝子に関してKO マウスを作出した。これらの中で、Rora、Ntrk2、Tgm3に関しては網羅的表現型解析が終了した。その結果、Rora遺伝子KOマウスに関しては恐怖条件付け記憶の若干の減弱、Ntrk2 KOマウスに関してはプレパルス抑制の減弱、Tgm3 KOマウスに関しては短期記憶の異常、社会行動の異常が観察された。Tgm3低タンパク食群において観察された社会行動の減少は低タンパク食群の産仔においても観察されており、当該遺伝子が胎児期低栄養により誘導される仔の発達障害様行動に関する感受性遺伝子の有力な候補の一つであることが示唆された。Atxn2 KOマウスに関しては平成29年度中盤に行動解析が終了する予定である。
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Genes & Nutrition
巻: 12 ページ: -
10.1186/s12263-016-0550-2
日本衛生学会誌
巻: 印刷中 ページ: -