研究課題
近年、加齢による卵子の質の低下とそれに伴う不妊や流産、新生児の疾患が社会的に問題になっている。卵子の質の低下には、細胞質の劣化および染色体の異常の2種類が原因と考えられている。本研究ではマウスをモデルとして、加齢による卵子の質を、顕微操作によらない、非侵襲的方法にて染色体の改善を図ることで向上させることを目標とした。まず最初に加齢卵子の質を確認するため、老齢(8-15ヶ月齢)マウスより採取したMII期卵子をホールマウント標本作製後、アセトオルセイン染色した結果、MII紡錘体の赤道面より離脱した姉妹染色分体が多くの卵子で確認された。また、老齢マウス卵子のGV期からMII期への発生をライブイメージングにて観察したところ、ヒストンアセチル化の異常(高アセチル化)が確認された。次に幼若(2-3ヶ月齢)マウスのGV期卵子にRNA干渉により脱アセチル化酵素であるHDAC活性を減少させたところ、MIIへの発生後、ヒストン高アセチル化が確認された。さらに卵子の染色体数について確認したところ、正常の2n=20より多い、あるいは少ないサンプルが認められた。また、老齢マウスでは排卵誘起の効果が若齢マウスに比較して低率で、反応性の個体差も確認された。さらに排卵された卵子の多くが異常分裂や異常発生した卵子であった。抗インヒビン血清による内因性FSHを利用した排卵誘起を試みたところ、排卵効率および1匹あたりの排卵数の上昇、異常卵の大幅な減少が認められた。この結果は外因性FSHを利用した通常の排卵誘起法では老齢マウスには過剰刺激となり、異常卵発生の一因と考えられた。排卵数が少なく、染色体異常率が高い高齢マウスには、本法が非常に有益な排卵誘起法であることが明らかになった。また、異常卵率が高いマウス系統においても本法により改善が認められたことより、加齢卵子モデルとして利用できる可能性が考えられた。
すべて 2017 2016 その他
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 7件) 学会発表 (3件) 備考 (1件)
EMBO Reports
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
PLoS Genet
巻: 13 ページ: e1006578
10.1371/journal.pgen.1006578
Biol Reprod
巻: 96 ページ: 221-231
10.1095/biolreprod.116.143495.
Genes Dev
巻: 30 ページ: 2637-2648
10.1101/gad.287045.116
Cell Rep
巻: 16 ページ: 2819-2828
10.1016/j.celrep.2016.08.027
Biochem Biophys Res Comm
巻: 478 ページ: 592-598
10.1016/j.bbrc.2016.07.109
Proc Natl Acad Sci USA
巻: 113 ページ: E3696-3705
10.1073/pnas.1522333113
http://ja.brc.riken.jp/lab/kougaku/