研究課題/領域番号 |
26430101
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研究機関 | 国立研究開発法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
岡村 匡史 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 室長 (00333790)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | LEAラット / 肥満 / 次世代シークエンサー |
研究実績の概要 |
インスリン分泌不全型糖尿病モデルであるLEAラットは、先天的なインスリン不全に加え、腎尿細管上皮細胞が特異的に変性するため、腎性糖尿を発症する。一方、BNラットのD10rat34~D10rat243(32Mb)をLEAラットの導入したコンジェニックラットは、LEAラットと比較し、腹腔内脂肪が有意に増加しているため、LEAラットの第10染色体に腹腔内脂肪蓄積をコントロールする抗肥満遺伝子の存在が示唆されている。本研究の目的は、LEAラットに存在する抗肥満遺伝子を同定することである。 ラット第10染色体には、LEAラットの腎性糖尿の原因遺伝子であるシスチノシン(Ctns)遺伝子が存在し、Ctns遺伝子が原因遺伝子として報告されているシスチノーシス患者では、成長遅延が見られるため、Ctns遺伝子変異が抗肥満の原因であることが考えられた。その可能性を排除するため、正常なCtns遺伝子を含むBNラットの3.16MbをLEAラットに導入したサブコンジェニックラットを作製し、X線CT装置を用いて腹腔内脂肪を定量した。その結果、サブコンジェニック系統では、LEAラットと同様、有意に腹腔内脂肪量の蓄積が減少していた。このことから、抗肥満遺伝子は、ラット第10染色体上のCtns遺伝子を含む3.16Mbを除いた28.94Mb(385遺伝子)に存在することが明らかになった。さらに、肝臓を用いてマイクロアレイ解析を行った結果、コントロールラットに比べ、1.5以上増減を示す遺伝子が1,642個あり、そのうちラット第10染色体の候補領域に存在する遺伝子は18個であった。また、この領域には近年肥満との関与が報告されている遺伝子が存在し、これらは有力な候補遺伝子であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
LEAラットのCtns遺伝子変異を同定する過程で作成したコンジェニックラット解析により、ラット第10染色体D10rat34~D10rat243(32Mb)に肥満関連遺伝子が存在する。前年度は、サブコンジェニック系統を樹立し、抗肥満遺伝子はCtns遺伝子とは関連がないこと、ラット第10染色体30.94Mb(451遺伝子)に存在することを明らかにした。今年度は、さらに領域を狭小化するサブコンジェニック系統を新たに樹立し、ラット第10染色体28.94Mb(385遺伝子)の間に抗肥満遺伝子が存在することを明らかにした。当初の計画では、この領域に存在する451遺伝子について、タンパク質コード領域を網羅するようにPCRプライマー約100セットを設計し、ロングPCRにより増幅したゲノム断片を次世代シークエンサーで解読する予定であった。しかしながら、候補領域に存在する遺伝子が多く存在したため、候補領域を狭小化することを優先し、新たに樹立したサブコンジェニック系統の解析から、候補領域に存在する遺伝子を385個に絞り込んだ。さらにマイクロアレイ解析および候補遺伝子アプローチにより、候補遺伝子を同定しており、研究計画は概ね順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度までの研究で明らかとなった候補領域28.94Mbには、385遺伝子には、が存在し、タンパク質コード領域の塩基配列の総和は約1Mbである。全てを網羅するように10-15kbを増幅するPCRプライマーを約100セット設計し、ロングPCRにより増幅する。増幅したゲノム断片を全て混ぜて、ライブラリを作製し、デスクトップ型次世代シークエンサーを用いて塩基配列を解読する。候補遺伝子アプローチおよびマイクロアレイ解析の情報等を総合的に判断し、原因遺伝子を同定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
サブコンジェニック系統の解析により候補領域を絞り込み、385遺伝子に絞り込んだ。次世代シークエンサーを用いた遺伝子の解読を次年度に繰り越したため、約10万円を次年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
次世代シークエンサーを用いた遺伝子の解読デスクトップ型次世代シークエンサーを用いて塩基配列を解読する経費として使用する。
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