研究課題
インスリン分泌不全型糖尿病モデルであるLEAラットは、先天的なインスリン不全に加え、腎尿細管上皮細胞が特異的に変性する為、腎性糖尿を発症する。さらに、コンジェニック系統を用いた解析から、LEAラットの第10染色体に腹腔内脂肪蓄積をコントロールする抗肥満遺伝子の存在が示唆されている。本研究の目的は、LEAラットに存在する抗肥満遺伝子を同定することである。昨年度までに明らかになった候補領域D10rat34-D10rat77およびCtns-D10rat243(28.94Mb)内に存在する遺伝子変異を同定するため、次世代シークエンサーを用いてゲノム配列を解読したところ、合計210個(108遺伝子)の機能的に重要だと思われる遺伝子変異が同定できた。その遺伝子変異の中には嗅覚受容体の変異が73変異(33遺伝子)存在しており、それらを除外すると疾患候補遺伝子は75遺伝子であった。さらに、遺伝子の機能が著しく低下すると予想される、annotation impact が“high”である変異は3遺伝子のみであった。そのうち、肥満あるいはインスリン抵抗性と関連が予想される遺伝子は1つであり、その遺伝子はマイクロアレイ解析においても、コントロールに比べLEAラット肝臓では2倍以上発現量が低下していた。本研究によりLEAラットに存在する抗肥満遺伝子の候補遺伝子を1つ同定した。この遺伝子の変異は、エクソン/イントロンジャンクションに1塩基が挿入されているため、スプライシングエラーにより機能が喪失していることが予想される。今後は、この候補遺伝子の機能解析を行うことにより、LEAラットの抗肥満メカニズムを解明すると共に、新たな創薬標的になり得るかを検討する予定である。
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