研究課題/領域番号 |
26430102
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
岡田 浩典 日本医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (80416271)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | AAVベクター / てんかん / マーモセット / 超音波 / 血液脳関門 / 疾患モデル / 成体 |
研究実績の概要 |
現在、ウイルスベクターによる遺伝子導入やゲノム編集技術の発生工学への応用により、サル類においてもトランスジェニック動物、および遺伝子ノックアウト動物のfounder作出が報告されている。しかし、サル類におけるゲノム改変動物作出の難しさは、遺伝子の挿入や欠失がモザイクになっているfounderから多数の子を産ませ、あるいは何世代もかけて絞り込みを行い、期待する表現型が出るのを祈るばかりの状況になることである。性成熟、妊娠の期間を考慮すると1世代が進むために3-5年かかり、これが数世代進んだ時点から、仮に高齢で発症する疾患の病態が出るのを待つとなると、さらに数十年待つ必要がある。また、サル類であるため近交係数が高くならないよう、大きめのコロニーとして維持する必要もある。これらを勘案すると、その間に施設や人員にかかるコストは莫大であり、発症時期や遺伝形式なども考慮したうえで極めて限定された疾患で試みざるをえない。 一方で、より多くの疾患においてもサル類の疾患モデルを利用するためのアプローチとして、すでに存在している正常の個体に対して、アデノ随伴ウイルスベクター(rAAV)を用いて遺伝子の機能阻害を行い、病態を誘導する方法がある。この場合、病態を誘導する成体のみを必要とし、また、高齢で発症する疾患でも高齢個体に対して病態を誘導することで、数十年待つ必要性を回避しうる。しかし、rAAVにより成体の脳全体へ病態を誘導するには、血液脳関門が障壁となるため、当該研究では、超音波照射による血液脳関門の開放技術を適用しつつ、てんかんの病態誘導を目標とする。 当該年度は、マーモセット脳における血液脳関門開放の詳細について、免疫組織化学とPETによる解析を進めた。その結果、少なくとも前部帯状回、基底核、視索、扁桃体、上側頭回、海馬において、主に10-50μmの血管で開放が起こることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該研究は超音波照射によりマーモセット脳の血液脳関門を開放し、rAAVにより血液を介して脳にてんかんの病態を誘導することを目的とする。そのためにはまず、血液脳関門開放技術の性質をより正確に理解する必要がある。当該年度は開放の起こるおおよその血管径、ならびに脳内でも開放されやすい領域を明らかにすることが出来た。これは、今後実際にrAAVによりてんかんの病態を誘導するために重要な情報である。 一方で、本年度の半ばに国立精神神経医療研究センターより日本医科大学に研究の場を移した。この異動に伴い、ウイルスベクターを作製するための環境整備や諸手続きに時間を要してしまった。そのため、本年度はてんかんを誘導する優性阻害変異体発現rAAVの作製までは行えず、その準備のために文献を集め精査するに留まった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の半ばに国立精神神経医療研究センターより日本医科大学に研究の場を移した。この異動に伴い、ウイルスベクターを作製するための環境整備や諸手続きに時間を要してしまったため、てんかんを誘導するための優性阻害変異体発現rAAVの構築と作製を今後進めなければならない。一方で、引き続きマーモセット脳における血液脳関門開放の詳細について解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の半ばに国立精神神経医療研究センターより日本医科大学に研究の場を移した。この異動に伴い、ウイルスベクターを作製するための環境整備や諸手続きに時間を要してしまった。そのため、本年度はてんかんを誘導するための優性阻害変異体発現AAVベクターの作製までは行えず、そのために次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
てんかんを誘導する優性阻害変異体発現rAAVを作製に関して、優性阻害変異体cDNAの合成、AAVベクタープラスミドの作製、AAVヘルパープラスミドとアデノヘルパープラスミドの準備、293細胞によるてんかん誘導AAVベクターの産生および精製、力価測定とin vitroでの機能評価を行う必要があり、その費用として用いる。
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