慢性心不全患者では心不全増悪による再入院率が高く、その誘因は塩分・水分制限の不徹底が33%と最も多い。心不全患者の治療と生活管理に関する日欧米ガイドラインでは、飲水制限の科学的根拠に乏しく、具体的な指導内容が述べられていない。本研究の目的は、心不全動物モデルで、心不全の病態進行に伴う水代謝(渇き、飲水量等)の変化を調べて、特に飲水行動が生体の恒常性維持に及ぼす影響を検討し、コンピューターによる自動計測と制御技術を用いた飲水行動制御の動物実験系を確立することで、より生理的に飲水行動を制御したときに心不全の治療効果が向上するかを検証することによって、新しい飲水制限治療の臨床研究と応用のために実験的な根拠を提示することである。 研究成果 本研究では、持続的にかつ精確に飲水行動の記録方法を確立し、ラットの摂水量を精確に持続的に記録し、心筋梗塞後の生存期間を観察した。その結果、心不全ラットの飲水のパターンが病態進行に伴い大きく変わっていた、飲む回数が減少する同時に一回飲む量が増えていた。更に、心不全早期の一回の飲む量と心筋梗塞後の生存期間が強い相関性あることを認めました。これらの発見から、一回に大量摂水方式では、循環系に与える外乱が大きく、生体内環境の恒常性維持のために神経液性代償機構が過剰に働く誘因になる可能性がある。 そして、飲水パターンを制御することが新たな治療ターゲットになる可能性を検証した結果、一回飲む量を制限された心筋梗塞ラットの心臓リモデリングを抑制することで生存率改善する効果を認めました。これらの成果は今後臨床応用研究への展開するために重要な実験的根拠になると考える。
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