本研究では、基質の硬さが誘引するがん細胞の浸潤能との関係を調べ、がん細胞が悪性化する機序の解明を目指した。その結果、基質の硬さによって転写因子ATF5が活性化し、基質接着タンパク質であるインテグリンの発現に関与することでがん細胞の浸潤能が亢進することを明らかとした。さらに、がん細胞株を硬さの異なる基質中で培養したところ、硬い基質上では、ATF5が核内に移行する現象を見出した。加えて、ATF5の欠失変異体をがん細胞に発現させ、核内移行の機序を調べたところ、核外搬出シグナル(NES)が関与していることが明らかとなった。
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