研究課題
近年、細胞内代謝変化それ自体が老化やインスリン抵抗性などの病態を引き起こすだけでなく癌の発症・進展に関与することが明らかとなり、エネルギー代謝カスケードをターゲットとした抗癌剤の開発競争が世界的に行われている。私はゲノムの守護神p53が解糖系と並ぶ重要なエネルギー源であるグルタミン代謝のマスターレギュレーターGlutaminase2 (GLS2) を活性化することを見出し、GLS2 が好気的エネルギー産生を促進するとともに産生される活性酸素に対しても拮抗的に作用するミトコンドリア制御分子であることを明らかとしてきた。そこで本研究ではGls2ノックアウトマウスを作成し、GLS2を介したグルタミン代謝の破綻が生体内においてどのような疾患と関連するのか検討を行った。その結果、Gls2ノックアウトマウスはメンデルの法則に従って産まれたが、フェノタイプ解析から、高脂肪食を負荷すると肥満・高中性脂肪血症・糖尿病といったメタボリック症候群を呈し、有意に生存曲線が低下することが明らかとなった。一般に、グルタミン代謝は癌細胞の主要なエネルギー源であるため、癌の増悪・進展に作用すると考えられているが、生活習慣病を背景に肝癌を発症するNASH-肝癌マウスモデルSTAMを用いた検討でGls2ノックアウトマウスは有意に肝癌を増悪することが示され、GLS2を介したグルタミン代謝の癌におけるパラドックス作用が証明された。
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