研究課題
Basal typeの乳癌細胞株であるSUM149PTを実験系に用いた。この細胞株にはBasal type様のEpCAM+細胞とClaudin-low type様のEpCAM-細胞が混在しており、EpCAM-細胞がEpCAM+細胞へと分化する。その両者におけるmiRNA発現パターンの差をmiArrayにより解析した結果、miR-200 familyがEpCAM +細胞でのみ高発現していることが分かった。EpCAM +細胞においてmiR-200 familyを阻害するとEpCAM-細胞になり、EpCAM-細胞にmiR-200 familyを強制発現させるとEpCAM+細胞になることが分かった。mammosphere assayを行ったところ、EpCAM+細胞はスフィア状のコロニーを形成し、EpCAM-細胞はシート状のコロニーを形成した。miR-200 familyを強制発現または阻害して強制的に分化させた細胞も同様の性質を示した。 発現制御可能なTuD RNA発現系を開発するにあたって、まずTuD RNA発現系の最適化を行った。従来のTuD RNA発現系はPolIIIプロモーター駆動であったが、PolII系のCMVまたはCAGプロモーターから転写される系を構築して、従来型との比較検討を行った。PolII駆動のTuD RNAは阻害能を示したが、PolIII系の方が高い阻害能を有していることが分かった。そこでTuD RNA発現系に適したPolIIIプロモーターの比較を行った。その結果h7SKプロモーターのエンハンサー配列を改変したプロモーター(e7SKと名付けた)が最も高い効果を示した。Tetracycline応答性プロモーターの開発を行うために、このe7SKプロモーターを基盤としてTet応答配列の数や位置について検討を行い、Doxycycline非存在下では漏れがなく、Doxycycline存在下では高いmiRNA阻害能を発揮するTete7SKプロモーターを開発した。
2: おおむね順調に進展している
MCF-7細胞を用いて25種類のmiRNAに対するTuD RNA発現レンチウイルスベクターをそれぞれ導入してmammosphere assayを行った。しかし、これまでの所、形成効率に顕著に影響を与えるmiRNAは、得られなかった。そのためEpCAM+細胞と未分化なEpCAM-細胞が混在しているとの報告のあるSUM149PT細胞をもちいることとした。SUM149PT細胞においてはEpCAMを制御できるmiRNAとしてmiR-200 familyを同定することができた。また我々は1種類のmiRNAだけではなく2種類のmiRNAを同時に阻害できるTuD RNAを設計した。このhybrid型TuD RNAを用いることによりmiR-200 familyを阻害することができる。そしてこれを用いてmiR-200 familyの活性を制御することによりsphere assayの際に形成するコロニーの形状が大きく変化させることができたことから、幹細胞分化に関わっていることが期待され、次年度以降解析を進めていくことができる。計画していた通りにDoxycyclineによって感度よく発現制御できるPolIII系プロモーターおよびそれを用いたTet応答型TuD RNA発現ベクターを開発することができた。このTet応答型TuD RNA発現ベクターはDoxycycline非存在下では漏れがなく、Dox濃度依存的にmiRNA阻害活性を示すため、誘導効率が非常に高いといえる。このTet応答型TuD RNA発現ベクターを用いることにより標的miRNAの活性を自在に制御できることを確認している。来年度以降の実験に用いることができる。
miR-200 family以外の種々のmiRNAについてのTuD RNA発現レンチウイルスベクターをSUM149PT細胞のEpCAM+細胞およびEpCAM-細胞に導入してmammosphere assayを行い、miR-200 family 以外に幹細胞性維持に関するmiRNAの探索を進める。開発したTet応答型発現系を用いてmiR-200 familyおよび同定したmiRNAの発現を自在に制御できるSUM149PT細胞を作製し、これを用いてmammosphereを作製する。Doxycyclineを投与して形成したmammosphereへの影響を観察する。以上の実験で得られた知見が他の乳癌細胞株にも適用できるかどうかを調べていく予定である。
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Scientific Reports
巻: 5 : 8428 ページ: 1-11
10.1038/srep08428.
http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/div-host-parasite/version1.html