研究課題
Basal type様のEpCAM+細胞とClaudin-low type様のEpCAM-細胞が混在している乳癌細胞株SUM149PTを実験系に用いた。EpCAM-細胞とEpCAM+細胞は双方向に転換する性質を有している。前年度までにmiR-200 familyを阻害することによりEpCAM+細胞をEpCAM-細胞へと転換できること、miR-200 familyを強制発現することによりEpCAM-細胞をEpCAM+細胞へと転換できることを見出している。SUM149PT細胞のEpCAM+細胞とEpCAM-細胞についてmiRNA発現パターンを調べた結果、miR-200 family以外の候補としてmiR-205が得られた。EpCAM+細胞においてmiR-205を阻害すると一部の細胞がEpCAM-細胞への転換が見られた。ヌードマウスを用いてEpCAM+細胞およびEpCAM-細胞の腫瘍形成能を調べたところ、EpCAM+細胞は高い腫瘍形成能を示した一方、EpCAM-細胞の腫瘍形成能は低かった。さらにmiR-200 family抑制によりEpCAM+細胞をEpCAM-細胞へと転換した細胞の腫瘍形成能は著しく低下しており、miR-200 family強制発現によりEpCAM-細胞をEpCAM+細胞へと転換した細胞の腫瘍形成能は大きく上昇していた。さらにEpCAM-細胞にmiR-200 family阻害ベクターを導入することにより、EpCAM+細胞への転換を抑制した細胞は全く腫瘍形成能を有していなかった。EpCAM+細胞とEpCAM-細胞についてEMT関連遺伝子の発現解析を行ったところ、Zeb1,Zeb2といった転写因子の発現量や、癌幹細胞の幹細胞性に重要であることが報告されているCD44v8アイソフォームがEpCAM+細胞において高発現していることが分かった。
2: おおむね順調に進展している
SUM149PT細胞のEpCAM+分画とEpCAM-分画についてmiRNA発現パターンを調べた結果、miR-200 family以外について新たにmiR-205が得られた。miR-205はEpCAM+細胞において阻害するとEpCAM-細胞への転換が見られたため、miR-200 familyと比べると弱いものの幹細胞性に関わるものと考えられる。hybrid型TuD RNA発現ベクターおよびmiR-141/miR-200c発現ベクターを用いてmiR-200 familyのSUM149PT細胞の腫瘍形成能に与える影響をxenograftアッセイにより調べた。これによりmiR-200 familyを抑制した細胞において顕著に腫瘍形成能の低下が見られたことから、miR-200 familyが幹細胞性を制御していることが明らかとなった。以上より、本年度において新規候補miRNAを選定し、前年度において発見したmiR-200 familyが幹細胞性を制御していることを明らかにすることができた。
Weinberg博士らのグループらによってEMTが誘導されmesenchymalな性質を有する細胞が癌幹細胞性を示すことが提唱されている。本実験ではこの説とは逆にepithelialな性質を有する細胞が癌幹細胞性を示したものの、本実験においてもEMTが癌幹細胞性に関わっていることが示された。そこでEMT関連遺伝子についてさらなる解析を行う。miR-200 familyを阻害することによりEpCAM+細胞のうち80-90%程度の細胞をEpCAM-細胞へと転換できる。miR-205を同時に阻害することにより、転換率が上昇するかどうかを調べる。miR-200 familyの阻害が不十分である可能性を検討するためにmiR-200 familyの阻害法についても検討する。またmiR-200 family阻害によって転換できなかった細胞についてmiRNA発現パターンを調べ、新規候補となるmiRNAの探索を行う。さらにSUM149PT以外の乳癌細胞株についてもmiR-200 familyの幹細胞性への関与について検討を行う。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) 備考 (1件)
Scientific Reports
巻: 6 ページ: 1-12
10.1038/srep21117
http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/div-host-parasite/version1.html