DEK誘導性ES細胞、及びDEK誘導性遺伝子改変マウスの作製を昨年度までに終了し、その解析にあたった。1)ドキシサイクリン(DOX)投与による強制的DEK発現ES細胞をヌードマウスに移植し、奇形腫の形成能と分化の組織学解析を行った。DOX投与と非投与群では、奇形腫の3胚葉への分化は確認できたが、DOX投与群では、神経外胚葉成分への分化がめだった。2)ドキシサイクリン(DOX)投与による強制的DEK発現マウスを用い、DOX投与と非投与群での比較を行った。濃度変化を行ったものの、表現型に変化はみられなかった。そこで、口腔癌の化学発癌剤を投与し、腫瘍形成時におけるDEK異常発現の役割を調査した。全身性にDEKを過剰発現させるマウスと扁平上皮にのみ特異的にDEKを過剰発現させるマウスを作製し、発癌誘発後、いろいろなタイミングで、DOXを投与した。DEK投与群では腫瘍形成を促進した。病理組織学的には、扁平上皮癌で、DEKは組織形態に変化を及ぼさなかった。しかし、マイクロアレイ解析にて、細胞増殖サイクル関連遺伝子の発現上昇を示し、その結果腫瘍形成を促進することが示唆された。つまり、腫瘍化しやすい環境において、初めてDEK異常は腫瘍化に働くことがわかった。
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