研究課題
本研究の目的は、中心体が染色体不安定性のチェックポイント機能を担うシグナル伝達(クロストーク)の場として機能することを示すことである。そのために中心体キナーゼであるLats1/2を介した新規のリン酸化シグナルカスケードの分子メカニズムを明らかにする。実験はほぼ予定どおり順調に進み以下の研究成果を得た。[1] Lats1/2-INCENP経路:前年度に引き続き、Lats1/2によるリン酸化部位を特異的にアミノ酸置換したINCENP変異体(SA, SD)のドキシサイクリン誘導系であるHeLa/Tet-ON細胞株を用いて、Lats1/2がINCENPのリン酸化を介してAurora-Bキナーゼの活性化を調節し、Aurora-Bと協調しながら多極分裂の細胞質分裂(切断)に機能することを明らかにした(Yabuta et al., 2016)。[2] Lats2-NS経路:中心体と核内機能を繋ぐ新しい経路としてLats2が核スペックル(NS: Nuclear speckle)の構成因子であるPHF6を特異的にリン酸化することを見出した。Lats2によるリン酸化部位を変異させた非リン酸化型PHF6はDNA損傷時に核小体から核質およびNSへの移動が阻害されたことからLats2によるリン酸化がPHF6の核小体からNSへの局在移動に必要であることが示唆された。[3] 癌幹細胞におけるLATS1/2の役割:口腔扁平上皮癌細胞株であるSAS細胞は癌幹細胞の特性の一つである低接着プレート上でのスフェア(細胞塊)形成能を持つ。LATS1やLATS2をsiRNAでノックダウンするとスフェア形成が顕著に阻害された。この結果はLATS1/2が癌幹細胞の自己複製能に機能している可能性を示唆している。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件)
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