研究課題
基底膜は細胞外マトリックスからなる非常に薄い膜状の構造体であり、細胞を秩序よく接着させ組織を安定化させている。癌細胞はこの特殊な基底膜を破綻させて、細胞増殖や浸潤・転移に適した細胞外環境として利用するようになる。これまでの癌細胞と基底膜の相互作用についての研究では、基底膜を代替する物質としてマウス肉腫由来のマトリゲルを使用してきた。しかしながら、マトリゲルに含まれるラミニン-111は胎児性のラミニンであり、成体の基底膜に含まれている主要なラミニン-511ではないため、マトリゲル基底膜浸潤モデルは、必ずしも成体の基底膜浸潤を反映するものではなかった。平成28年度の研究では、ラミニン-511のα5鎖N末端にある細胞接着および自己会合に関与するアミノ酸配列の同定を試みた。その結果、血管内皮細胞の接着に関与し、さらにin vitroにおいて血管内皮細胞による管腔形成を抑制した。管腔形成の抑制はラミニン-511による自己会合の阻害を示唆したが、研究期間内に確認することはできなかった。また、ラミニン-511による癌細胞の運動促進は、発がんプロモーターであるPMAを用いることにより、細胞内のROCKを介した経路が、細胞表面受容体インテグリンα3β1のラミニン-511に対する接着を抑制することによると明らかになった。そして、ラミニン-511の特異的な受容体であるルテランに対するファージ抗体の単離に成功し、このファージ抗体がラミニン-511による癌細胞の運動促進を抑制するのを見出した。
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