研究課題/領域番号 |
26430126
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
田中 正和 関西医科大学, 医学部, 助教 (20454613)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | HTLV-1 / ヒト化マウス / APOBEC3 / Tax / CD25 / ウイルス感染 / インターフェロン |
研究実績の概要 |
当研究室で樹立したHTLV-1感染ヒト化マウスを用いて、ATL様病態発症過程において発現誘導が確認されたAPOBEC3B遺伝子の誘導機構とその宿主遺伝子の変異蓄積への影響を明らかにすることを目的としている。 近年多くの癌で発現上昇しているAPOBEC3遺伝子の活性化には、ウイルス感染そのものや感染時に生じる免疫初期応答による影響(インターフェロン誘導)が報告されている。そこで感染前後のヒト化マウス末梢血におけるAPOBEC3Bの発現とTaxの発現を解析したところ、HTLV-1の感染に伴いTaxの発現と共にAPOBEC3Bの発現上昇が観察された。更にHTLV-1感染時に発現しているTaxによりAPOBEC3B遺伝子の誘導が想定されたため、Jurkat T細胞にTax発現プラスミドを一過的に導入したところ、APOBEC3B mRNAの発現誘導が観察された。続いてHTLV-1 infectious clone DNAをJurkat T細胞に遺伝子導入した場合も、Tax発現が検出レベル以下であったにもかかわらず APOBEC3Bの発現が認められた。またHTLV-1感染ヒト化マウス脾臓内のCD25陽性細胞においては、CD25陰性細胞と比較したところ Tax mRNAの発現が有意に抑制されており、その時のAPOBEC3B mRNAの発現は上昇していた。更にEx vivoで培養するとTax発現は数十倍に再活性化されるが、その際 APOBEC3Bの発現は抑制された。 これらの事実より、HTLV-1感染 T細胞におけるAPOBEC3Bの発現誘導は、HBZをはじめとするTax以外のウイルス遺伝子産物の関与あるいは発現RNAを介したAPOBEC3B発現誘導の可能性が強く示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
既にHTLV-1感染におけるAPOBEC3Bの誘導機構に関して新たな可能性を見出しており、HBZをはじめとするTax以外のウイルス遺伝子産物の関与が強く示唆された点、抗HTLV-1感染応答での誘導によりAPOBEC3Bの誘導が認められた点がある。今後は新規の実験計画での検討として、ヒト化マウス個体への人為的付加を検討に加え、感染細胞内での変異蓄積への影響を明らかにしたい。
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今後の研究の推進方策 |
1: HTLV-1感染によるAPOBEC3Bの発現誘導における、Taxの直接作用の可能性が低いことから、感染個体レベルあるいは細胞レベルでの抗ウイルス感染応答の関与が想定しており、現在CD4陽性末梢血を用いて、IFNa 添加24時間後におけるAPOBEC3BならびにIFNa 応答遺伝子(STAT1, OAS1ならびにMXA)の発現上昇を確認している。そこで今後は、HTLV-1感染ヒト化マウス脾臓内のCD25陽性細胞およびCD25陰性細胞と比較し、サイトカインの発現あるいは細胞内インターフェロンシグナルの発現を解析し、変異性を獲得する機構を明らかにしたい。
2:HTLV-1感染ヒト化マウスでのAPOBEC3Bの発現誘導が確認されたものの、個体内感染細胞ゲノムおよびHTLV-1プロウイルスにおける遺伝子変異の蓄積が十分認められていないことも想定される。そこで同マウスにDNA二本鎖切断能を有する抗ガン剤やDNA修飾能をもつ発がん剤の長期暴露により、感染細胞の異常増殖が誘導されたものを人為的に試みる。その際感染細胞のクローナリティを計測し、ウイルス遺伝子発現や変異導入率を計測し、CD25陽性細胞およびCD25陰性細胞の比較検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
予算額における執行率は99.9%である。その差引残高として次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
物品費として使用。
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