研究課題
本研究では当研究室で樹立したHTLV-1感染ヒト化マウスを用いて、ATL様病態発症過程において発現誘導が確認されたAPOBEC3B遺伝子の誘導機構とその宿主遺伝子の変異蓄積への影響を明らかにすることを目的とした。昨年度までの結果より、感染前後のヒト化マウス末梢血におけるAPOBEC3Bの発現とTax発現を解析したところ、Taxの発現と共にAPOBEC3Bの発現上昇が観察された。またHTLV-1感染ヒト化マウス脾臓内のCD25陽性細胞においては、CD25陰性細胞と比較したところ Tax mRNAの発現が有意に抑制されており、その時のAPOBEC3B mRNAの発現は上昇していた。さらにEx vivoで培養するとTax発現は数十倍に再活性化されるが、その際 APOBEC3Bの発現は抑制された。そこでHTLV-1患者検体でありながら、腫瘍化されていないHAM患者検体において7種のAPOBECファミリーでの解析を進めた。その結果健常人とHAM患者との比較では有意な差は認められなかった。更に同HAM患者検体を用いてEx vivo培養し、Taxを再活性化すると、APOBEC3Bの発現のみ抑制されたが、その他のAPOBECファミリー遺伝子はそれぞれ発現が上昇することが認められた。従って本研究では、初期感染時ではHTLV-1の感染に伴いTaxの発現と共にAPOBEC3Bの発現上昇が観察された。また腫瘍形成過程ではAPOBEC3Bの発現誘導はTax発現とは関係なく、HBZをはじめとするTax以外のウイルス遺伝子産物の関与が考えられた。さらにAPOBECファミリー遺伝子の中では3Bが特に発現抑制されていたことから、抗HTLV-1感染応答での誘導によりAPOBEC3Bの誘導が認められた時に宿主遺伝子の変異が蓄積する機構が生じることが改めて明らかとなった。
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