研究実績の概要 |
【目的】本研究課題では、大腸癌切除検体約50サンプルから各患者固有の大腸癌幹細胞様細胞株を樹立し、以下のことを明らかにすることを目的とした。 (1) 大腸癌幹細胞様細胞株の樹立とそのプロファイリング 遺伝的背景や変異などが症例ごとに異なる大腸癌組織からの細胞様細胞株の樹立には、それぞれの特性に応じた細胞単離法と培養法が必要となるかもしれないため、現行のプロトコールに改良を加え、効率の良い樹立法を検討する。樹立された大腸癌幹細胞様細胞株が、どの程度生体内での癌組織の生物学的特性を反映するかについては、これまで検証されていない。そこでそれぞれの大腸癌幹細胞様細胞株と由来する癌組織のプロファイリングを行なう。具体的には、大腸癌の発生・進展に深く関与していると考えられているWntシグナル伝達系遺伝子やKras遺伝子群などを含めたターゲットシークエンスや網羅的遺伝子発現解析により比較検討する。 (2) 大腸癌幹細胞様細胞株の生物学的特性を加味した大腸癌悪性度評価 上記(1)により得られた、大腸癌幹細胞様細胞株の生物学的特性と、由来となる各患者の臨床病理学的所見とを組み合わせて、大腸癌の悪性度(再発・転移のリスク)をより正確に評価できるかどうかを検討する。 【結果】数種類の培養法を検討した結果、効率の良い樹立法が確立でき、これまでに大腸癌切除検体から各患者固有の大腸癌幹細胞様細胞株(21株)およびXenograft(NOGマウス)(18個)を樹立することができた。さらに、APC, p53, PTEN, Kras, Braf, PIK3CAなどを含めたターゲットシークエンスを行い、各細胞株の遺伝子変異状況を明らかにした。
|