研究課題
PP6の発がんにおける機能を解析する目的で、これまで、TPA/DMBAを用いた2段階の皮膚発癌実験を行ってきた。PP6の触媒サブユニット(Ppp6c)を欠損させたマウス皮膚では、DMBAのみ(プロモーターであるTPA処理なしで)で、腫瘍発生が亢進することを見いだしていた。しかし、DMBAが自然には存在しない化学物質であったこと、またその腫瘍が良性腫瘍のパピローマであった。したがって、マウスの発癌実験で、Ppp6c欠損が環境変異源による腫瘍形成を促進するのか、またより悪性度の高い腫瘍の原因となるのかが、ヒト発癌におけるPP6活性異常の意義を考えるうえで、重要な課題となった。そこで、皮膚発癌の最も主要な環境原因と考えられている紫外線によるマウス皮膚発癌実験を試みた。タモキシフェンの塗布によりマウス皮膚においてPpp6cをコンディショナルに欠損させ、それにUVB照射を行った。その結果、野生型では腫瘍形成が起こらない時期に、基底細胞がんが発生することを見いだした。一般に、ヒトで紫外線によって発生する腫瘍においては、発生した腫瘍で高い頻度でp53の変異が起こっていることが知られている。そこで、得られた腫瘍においてp53抗体を用いて免疫組織染色をおこなったところ、高い頻度でp53陽性細胞が認められた。一方で、PP6の活性が、DNAの2重鎖切断の修復に必須であるという報告があることから、DNAの2重鎖切断の局在を、そのマーカーであるγH2AXを用いて調べた。その結果、p53陽性細胞とγH2AXの陽性細胞が高い頻度で共存した。このことから、Ppp6c欠損によるDNA修復異常が、紫外線発癌の原因の1つになると考えられた。
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