*飼料中の植物成分量の違いによる腫瘍形成の変化 緑黄色野菜に多く含まれる化学物質(I3C)はAhRリガンドとして働く。I3C含有飼料を摂取したマウス腸ではケモカインCCL5発現が低下し、AhRの炎症抑制作用が示唆された。今年度はAhRによるCCL5 発現抑制の作用機序を検討した。 マウス大腸がん細胞をサイトカイン処理するとCCL5 mRNAが誘導され、I3C前処理はこの応答を阻害した。AhRと炎症シグナルであるNFkB経路との相互作用に着目し、この経路の阻害剤BAY とI3C作用を比較した。BAY前処理は、I3C同様にCCL5誘導を阻害した。一方、BAYで観察されたIkBaタンパク分解の阻害は、I3Cではみられなかった。NFkB p65の核移行は、BAYで阻害されたが、I3Cは影響しなかった。さらにNFkBレポーター活性は、BAYで低下したが、I3C 効果はなかった。マウスCCL5 遺伝子の転写開始点の5’上流に存在するNFkB およびAhR/ARNT 結合配列を介したAhRとNFkB相互作用の可能性が示唆された。 *ヒト大腸がん組織におけるAhRの役割 昨年度は、ヒト大腸がん細胞株に発現するAhRをsiRNAでノックダウンすると、細胞運動の亢進が見られることが示された。本年度はこの現象に関わる分子について解析した。用いた細胞株HCT116では、RhoファミリーのRacが多く検出され、AhRノックダウン細胞ではRacの活性化がみられた。次にintegrin分子種の発現を調べた。AhRノックダウン細胞ではintegrin b5タンパクの減少が見られたが、RNAレベルの変化は認められなかった。またARNTノックダウン細胞ではintegrinb5の変化はみられなかった。AhR発現抑制の結果、炎症に関連したシグナル経路の変化が細胞接着や細胞運動に影響を与える可能性がある。
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