研究課題
ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)除菌治療は胃がんの予防に一定の効果を示すが、除菌後にも胃がんが生じることが知られており、新たな対応が求められている。本研究では、スナネズミモデルを用いて、除菌後の胃粘膜における炎症・DNA修復関連因子の発現動態を検索し、除菌後胃がんの発生機序解明およびハイリスク群の検出に有用なマーカーを探索することを目的とする。5週齢、雄のSPFスナネズミ(MON/Jms)にピロリ菌を胃内接種し、胃発がん物質としてメチルニトロソウレア(MNU)を20週間飲水投与した。開始27週(早期)または37週(後期)に除菌を実施した後、経時的(32週・42週・52週)に解剖し、胃粘膜を採材した。各個体における除菌の成否は、ヘリコバクター選択培地によるコロニー形成能、およびRT-PCR法によるピロリ菌UreA遺伝子発現の有無によって確認した。腺胃における腺癌の発生率はピロリ菌+MNU群で71.4%であったのに対し、後期除菌群14.3%、早期除菌群0%で、除菌によって低下することが確かめられた。一方、背景胃粘膜の経時的解析により、炎症性病変は除菌によって著しく減退するものの、単核細胞浸潤を特徴とする慢性胃炎は除菌後にも長期間残存することが明らかとなった。平成28年度は、残存する炎症と除菌後胃がんとの関連を検索するため、解析対象に胃底腺を加え、背景粘膜における各種炎症関連因子のmRNA発現解析を継続した。その結果、Il-1β・Tnf-α等の発現は除菌後速やかに低下するのに対し、Il-6・Ifn-γの低下は比較的緩やかで、MNU投与群での発現が非投与群よりも高いことが示された。以上の結果は、ピロリ菌が除去された後の胃粘膜において、長期間持続する慢性炎症が除菌後胃がんの発生に関与していること、特定の炎症性サイトカイン発現をハイリスク群検出に応用できる可能性を示している。
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