研究課題
本研究の目的は、ヒストンメチル化酵素EZH2によるがん細胞の新規制御機構を解析し、がんの悪性化への機序を解明することで、治療標的としてEZH2が真に有用であるかを探ることである。がん細胞におけるEZH2-リン酸化-エピゲノムネットワーク機能の解明およびその分子基盤に対する小分子化合物の探索を試みることを目標としている。昨年度同定したEZH2の発現に影響を与えるキナーゼの解析を行った。710種のキナーゼを標的としたsiRNAライブラリーを用いたスクリーニングから特にEZH2の発現に影響するキナーゼ12種類を同定したが、その中から1種類(キナーゼX)に絞ってさらに解析を進めた。このキナーゼはNFKB経路に関連しており、この経路の別のキナーゼをノックダウンしてもEZH2の発現に影響を与えることが明らかとなった。どのようなシグナルが入るとキナーゼXが有意に活性化され、EZH2発現に影響を与えるかなど、さらなる解析を行っている。短いEZH2の機能解析に関しては、EZH2のN末、C末に蛍光を付けたコンストラクトを完成させ、細胞に導入し局在の変化について解析した。グリオーマ幹細胞では分化誘導時に短いEZH2が発現していたが、他のがん由来の細胞株での発現の条件を検討した。別の細胞株では安定して確認できなかった。EZH2タンパクを大腸菌で発現させ、In vitroで切断を確認できる系の構築に着手した。十分量タンパクが得られ、今後の実験系に用いることができることを確認した。
2: おおむね順調に進展している
EZH2を制御するキナーゼに関する機能解析についてはおおむね順調に進行している。EZH2のリン酸化部位の同定は進まなかったが、完成したコンストラクトでの解析が進んでおり、平成28年度の進展が期待できる。
平成28年度はEZH2自体の解析を進める。必要なコンストラクトは完成しており、基礎的な実験は進んでいる。またEZH2タンパクの大腸菌での発現系も完成しているため、切断部位の同定を目指して研究をすすめる予定である。EZH2を制御するキナーゼに関しては解析が進んでおり、機能解析をさらに行い、上下流のシグナルについても検討を行う予定である。
今年度予定していた質量分析によるEZH2切断部位の解析は、解析に値するサンプルが作成できず見合わせた。
EZH2の切断部位の同定には質量分析によるC末解析が必須であり、サンプルが調整でき次第、実施する予定である。
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