研究課題/領域番号 |
26430137
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研究機関 | 愛知県がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
長田 啓隆 愛知県がんセンター(研究所), 分子腫瘍学部, 室長 (30204176)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 肺がん / アノイキス |
研究実績の概要 |
GeneBに関して、既にKRAS変異をdriver変異として持つ肺がん細胞株において、ノックダウンにより増殖抑制・運動能抑制・anoikis誘導が引き起こされることを確認している。このGeneBのanoikis誘導能とがん細胞が持つdriver変異との関連を更に検討するために、EGFR変異を有する肺がん細胞株を用いて検討した。GeneBの発現を完全に欠失させるために、GeneBに対するCRISPR-Cas9コンストラクトを作成し、GeneBのノックアウトを行なった。その結果非常に著明な増殖抑制・anoikis誘導が引き起こされる結果を得た。KRAS変異・EGFR変異はともにanoikis抵抗性に作用するが、GeneB機能を抑制すると、これらのdriver変異からのanoikis抵抗性シグナルを阻害して、anoikis誘導が起こることが確認され、GeneBがanoikisの制御シグナルにおいて非常に重要な抑制的機能を果たしていることが確認された。 このGeneBのanoikis抑制シグナルの作用機序を解明するために、細胞内シグナル分子とGeneBとの相互作用を検討する必要がある。現在GeneBを免疫沈降し、GeneBと共沈降する蛋白分子を網羅的に同定するために、GeneBの細胞内ドメインの発現コンストラクトを作成して、免疫沈降の条件を種々検討し、最適な条件を見出した。これにより迅速確実に質量分析を用いた網羅的な同定を行なう準備が整った。 GeneAについても、GeneBと同様のアプローチで機能解析を進めることを計画しており、GeneB研究の経験に基づいて、GeneAをノックアウトするCRISPR-Cas9コンストラクトや、質量分析によるGeneA結合分子の網羅的同定のためのコンストラクトを作成し、検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遺伝子のノックダウン・ノックアウトを用いて機能を推察する計画であり、GeneBにおいては、CRISPR-Cas9のコンストラクトを使ってGeneBのノックアウトに成功し、GeneBの機能が明瞭に示された。この経験に基づきGeneAのノックアウトも進めており、機能解析の計画は順調に進んでいる。 また、これら遺伝子産物と結合しシグナル伝達に関わる分子を網羅的に同定するために、免疫沈降産物を質量分析解析により網羅的に同定することを目指しており、この点に関してもコンストラクトを作成し、免疫沈降の最適な条件を見出しており、網羅的同定の計画は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
おおむね順調に研究計画を遂行しており、大きな変更点は無く、当初の研究計画に基づき研究を進めていく。ノックダウン・ノックアウトによる機能抑制実験により、GeneA及びGeneBの機能を更に解析すると共に、この際の細胞接着・anoikis制御に関わる種々のシグナル伝達分子の活性の変化を検討していく。 また、質量分析解析に基づき、GeneA及びGeneBの遺伝子産物に結合する蛋白分子群が網羅的に同定されたら、それらのシグナルネットワークを探索し、その中での重要なシグナル伝達分子を見出す。そしてGeneA及びGeneBと、見出したシグナル伝達分子との間の機能的な相互作用を探索していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
GeneA及びGeneB遺伝子産物に結合する蛋白分子の網羅的同定のため、これら遺伝子産物の免疫沈降条件を検討したが、当初様々な条件を検討することを想定していたが、比較的順調に条件設定ができ、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額が生じたことにより、質量分析解析を比較的経費的な余裕を持って行なえることになった。質量分析解析も定性的解析~定量的解析まで種々の解析法があり、最適な解析法を選択し研究計画を進めていく。
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