研究実績の概要 |
平成26年度は、浮遊培養とゲル培養での極性状態のちがいを観察した。極性分子(villin, ZO-1, Par3, atypical PKCなど)の免疫染色を行い確認した。ゲルと浮遊培養で極性の状態が異なることが分かった。どちらも24時間以内に起こった。さらに、臨床検体のヒト大腸癌の組織を用いて血管内に浮遊する腫瘍塊、血管壁に着床した腫瘍塊、血管壁から間質に浸潤した腫瘍塊など、様々な脈管侵襲における極性状態を二重染色で検討したところ、apical out, apical in両方の状態が人の体内でも存在することが分かった。 平成27年度は、integrinの下流のシグナルであるFAK, Src, ILKについて解析したところ、Src阻害剤で極性転換を顕著に抑制することからSrcの関与が示唆された。さらに、endocytosisに関与するdynaminにも注目した。Dynamin阻害剤で極性転換が抑制されたことから、dynaminの関与も示唆された。さらに、CTOS を門脈から注入して肝転移モデルを確立した。src、dynaminともにその阻害剤で処理したCTOSは肝転移を抑制した。 平成28年度は、まず極性転換に関連する分子としてRhoに着目し、Rho kinaseの阻害剤Y27632を用いて、極性転換しないCTOSが極性転換を起こすように変化を起こすことを発見した。また、臨床検体から樹立したCTOSライン10症例分を用いて、ゲルに埋めた際に極性転換するCTOSと極性転換しないCTOSに分類し、microarrayを行ったところRhoの機能を制御する分子が同定されてきた。
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