研究課題
【研究計画書の作成】本研究のための研究計画書を作成し、当施設のヒトゲノム・遺伝子解析研究倫理審査委員会の承認を受けた(審査番号「344-2」)。その後対象症例から文書での同意を得て、検体の収集を進めている。【小細胞肺癌CTCの採取】A549-RFP細胞を健常人血液に混入させ、ISET法であるRosettesep(Stemcell technologies)を用いたCTC回収効率について検討した。回収後の全細胞数とRFP陽性細胞数をフローサイトメトリーを用いてカウントした。REP陽性細胞は、64%から72%回収可能であり、全細胞数に占めるA549-RFP細胞の割合は増加した。A549-RFP細胞のみを回収することはできなかったが、CTC細胞の濃縮は可能であると判断した。【微量核酸の定量方法の確立】ヒトALU配列を標的とした定量的PCR法にて、微量DNA量の定量方法を確立できた。本方法は健常人単核球由来の濃度が明らかとなっているDNAの希釈検体の測定結果から標準直線を作成し、DNA濃度を概算することができた。またPCR増幅産物の塩基長を115bpと247bpとなるように2種類のプラーマーを用いて行うことで、DNAの断片化率を求めることもできた。【低頻度変異DNA検出方法の確立】PointMan DNA Enrichment Kit (EKF Molecular Diagnostics)を用いて変異特異的PCRを行った。得られたPCR産物を用いたダイレクトシークエンスにて変異DNAの検出を確認した。細胞株由来のDNAを用いて野生型DNAと変異DNAの比率の異なるコントロールDNAを作成し、検出可能な頻度を測定したところ0.1%までは十分に検出可能と判断した。同意を得た患者から血漿中DNAを回収し、上記の方法を用いてDNA定量を行った。得られたDNA濃度は、平均3.3ng/μL(0-22.1)であった。
2: おおむね順調に進展している
本研究を遂行するためにあらかじめ行っておくべきこととして以下が挙げられる。1)研究計画書の作成と承認。2)CTCの回収および濃縮方法の確立。3)微量DNAの濃度測定方法の確立。4)微量および低頻度な遺伝子変異の検出方法の確立。5)CTCを用いた遺伝子解析。本年では上記の1)-4)は、ほぼ達成されておりおおむね順調と判断した。
平成27年度以降は、平成26年度に確立された各種方法と得られた検体を用いて、小細胞肺癌の新たな治療標的を見出す研究を進めていく予定である。具体的には、1)小細胞癌CTCの濃縮および回収、2)小細胞肺癌CTC にみられる特性の検討と新たな治療標的およびバイオマーカーの探索、3)細胞株を用いた新規治療標的分子の機能解析,4)CTC ドロップシステムを用いた遺伝子異常、遺伝子発現検出系の確立,5)CTC ドロップシステムを用いた小細胞肺癌CTC の新規バイオマーカーの解析,6)小細胞肺癌の新規治療標的、新規バイオマーカーの提唱,である。平成27年度は、上記1)2)を主に進める予定である。しかし、上記解析を進めるためにはこれまでに行ったCTC回収方法で得られた結果より、さらに濃縮効率や回収効率を上げる必要があると思われる。併せてCTC解析方法についても検討が必要である。
本年度はおおむね予定通りの使用額となった。物品費においては、実際に研究を進める上で本年度予定していた内容と次年度予定していたものを入れ替えて行ったためその差額が生じた。具体的にはCTC細胞の遺伝子解析を次年度に回し、本年度では次年度にも予定していた検体収集やその処理を前倒して行った。
次年度は、従来予定されていた研究に加えて、本年度予定していた研究の一部を行う予定である。具体的にはCTC細胞の遺伝子発現解析を予定している。次年度予定していた検体収集とそれらの処理については予定より進んでいるため、CTC細胞の遺伝子発現解析を行うことは可能である。しかしながら必要となる物品費はより多くなるため、次年度使用額を必要とする。
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