研究課題/領域番号 |
26430148
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
七條 茂樹 久留米大学, がんワクチンセンター, 准教授 (30080592)
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研究分担者 |
野口 正典 久留米大学, 先端癌治療研究センター, 教授 (10140691)
由谷 茂 久留米大学, がんワクチンセンター, 准教授 (20279160)
山田 康秀 独立行政法人国立がん研究センター, 消化管内科, 研究員 (80290956)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ハプトグロビン / がん予後予測 / SNPs |
研究実績の概要 |
1.血漿中ハプトグロビン(HP)の測定および予後との関連性:前立腺がんに対する漢方薬併用ペプチドワクチンの臨床試験検体における、ワクチン単独群と併用群の血中HPは有意な差はなかった。また、膀胱がん32症例のHPは、1クールワクチン投与後に増加が見られ、2クール後には低下傾向が認められたが統計学的有意差はなかった。2.再燃前立腺がんの長期生存群(N=18)と短命群(N=18)の血清中HPおよびフコシル化率の測定:フコシルHP(fHP)はワクチン投与後に有意に上昇した。何故増加したのかは現時点では不明である。全HPにおけるfHPの割合は長期生存群において有意に高かった。HPの値が長期生存群で有意に低い事によるものと考えられた。両群でワクチン投与前後のfHPに有意差を認めなかった。fHPを中央値より高い群と低い群を比較、あるいはfHPが増加又は減少する群で有意差は認められなかった。fHPとHP量の間に有意な相関は認められなかった。3.HPの血液細胞に対する生物学的機能を解明する目的で、末梢単核球細胞(PBMC)をPMA+ionomycinまたはCD3/CD28で刺激してHPを加えて培養し、各種T細胞抑制性尾膜マーカーの発現に対する影響を調べた。PD-1、 BTLA、 TIM-3の発現のいずれも10~20%の減少が認められた。同時に、培養上精中のサイトカイン濃度を調べたところ、HPによって濃度依存性にIL-6とIL-8の濃度が上昇した。PMA刺激PBMCの場合はIL-1B、IL-6、IL-5、TNF-alpha、およびIL-4濃度が上昇しGM-CSF濃度は低下したが、CD3/CD28刺激PBMCの場合はIL-10,IL-6,IL-4濃度が上昇したが、GM-CSF、 TNF-alpha濃度は低下した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.漢方薬(桂枝茯苓丸)併用ペプチドワクチンの前立腺がんに対する臨床試験がほぼ終了し、ワクチン単独群(N=34)と併用群(N=32)において血中HP量をELISAで測定した。併用群と単独群にけるHPの値には、いずれのクールにおいても有意差は認められなかった。SNPsは現在測定中で、次年度中に終了予定である。また、予後との関連は次年度以降解析を行う予定である。また、膀胱がん32症例、92検体のHPの測定を行った。予後との関連は次年度以降解析を行う予定である。さらに、胃がんのワクチン症例および化学療法患者の検体を準備した。次年度中に血中HPおよびSNPsを測定する予定である。2.再燃前立腺がんの長期生存群(N=18)と短命群(N=18)の血清中HPおよびフコシル化率の測定は平成27年度以降の予定であったが、三善英知教授(大阪大学)により開発された測定キットの試作品を使用する機会を戴き、前倒しして検討した。血中HPは、がんワクチン投与によってfHPが優位に増加したものの、長期生存群の方が短命群と比べて有意に低いことが再確認されたが、fHPは両群で有意差を認めなかった。3.HPの血液細胞に対する生物学的機能を解明する目的で、末梢単核球細胞にHPを加えて、各種膜マーカーおよびサイトカインの発現に対する影響を調べた。HPが各種T細胞抑制性マーカーIL-6やIL-8などの炎症性サイトカインを上昇させることと、予後不良群でHPが高いことに関連があることが示唆された。 以上、本年度に予定していたSNPsおよび血漿中HPタンパク質の測定、および次年度測定分の検体の準備などに加え、次年度以降予定していたペプチドワクチン臨床試験における再燃前立腺がんのfHPの測定および解析結果を得たことから、おおむね目標は達成された。
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今後の研究の推進方策 |
(今後の推進方策):1.漢方薬併用ペプチドワクチンの前立腺がんに対する臨床試験におけるワクチン単独群と併用群での血中HP量と予後との関連性を解析する。2.SNPsを測定し血漿中HP量との関連および予後との関連を解析する。3.膀胱がん32症例、92検体のHPの予後との関連を解析する。4.抗がん剤治療後の胃がん患者検体を、ペプチドワクチン投与胃がん患者の血中HPとともに測定し、それぞれの治療における血中HPと予後との関係を解析する。5.SNPsと抗がん剤治療による予後予測が可能か否かは、国立がんセンター倫理委員会で承認され且つ患者の同意が得られたものについて解析する(分担研究者の高島淳生医師が担当)。6.fHP定量用のELISAシステムの独自開発はバックグランドが高く時間がかかることが分かり、大阪大学教授の三善英知博士より測定キットを恵与いただき測定に用いた。fHP量をワクチン投与前後で比較したところ、ワクチン投与後で有意に上昇した。また、全HPにおけるフコシルHPの割合を調べてみると、長期生存群において有意に高いことが明らかになったなど興味深い知見が得られた。しかしながら、再燃前立腺がんのワクチン投与により予後が長い群と短い群で比較したところ、HPでは有意な差が認められたにもかかわらず、fHP有意な差が検出されなかった。そこで、今後他のがん種によるHPのフェノタイプの測定はHPに絞ることにした。その他のがんに対するペプチドワクチン投与患者の予後予測にHPがなりえるかの検討のため、血中HPおよびSNPsの測定を継続予定である。 (次年度使用額が生じた理由と使用計画)抗がん剤治療検体の血中HPおよびSNPsの測定が終了できなかったため、解析作業に入れなかったため。次年度に当該検体の臨床因子のまとめおよびHPおよびHP-SNPsとの関連の解析のために使用する。
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次年度使用額が生じた理由 |
抗がん剤治療検体の血中HPおよびSNPsの測定が終了できなかったため、解析作業に入れなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に当該検体の臨床因子のまとめおよびHPおよびHP-SNPsとの関連の解析のために使用する。
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