研究課題
がんの診断学では、血中腫瘍マーカーの開発はその簡便性や低浸潤性により多大な期待感がある。本研究では、血中に分泌され、かつ安定的に存在し、ELISAで定量可能な新規腫瘍マーカーとなる物質を見出すことを目標に、生理活性ペプチド前駆体タンパク質を標的として探索を行うことを計画した。本計画の背景には、申請者らにより見出された小細胞肺癌に対する腫瘍マーカー候補物質であるニューロテンシン前駆体(proNT/NMN)、ならびに既存の腫瘍マーカーであるガストリン放出ペプチド前駆体(proGRP)の存在がある。生理活性ペプチドは、前駆体タンパク質がプロセシングを受けることにより生じるが、その過程にプロホルモン変換酵素群(prohormone convertasesまたはproprotein convertases, PCs)の関与が示唆されている。こうした経緯から、本研究では、9つあるPCsの働きの違いにより、proNT/NMNやproGRPのような前駆体タンパク質が腫瘍特異的に血中に存在するのではないかと考え、PCsの活性を指標に、プロテオミクスを基盤技術として、腫瘍マーカー候補となる前駆体タンパク質を見出すことを計画した。具体的には、小細胞肺癌をはじめとした各種がん細胞株におけるPCsの遺伝子発現や配列解析をもとに、PCs活性を基にした培養細胞上清液中の生理活性ペプチド前駆体タンパク質の存在を検討することである。計画1年目では小細胞肺癌細胞株6種、計画2年目では肉腫関連細胞株20種について、PCsをはじめとした遺伝子発現のデータを取得した。計画最終年度の3年目では、さらに消化器系のがん細胞株を中心に55株について遺伝子発現のデータを取得した。これら細胞株に加えて、臨床検体におけるPC遺伝子の発現、配列ならびにコピー数データをもとに、プロテオーム解析に向けた基盤データベースを作成した。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
Scientific Reports
巻: 7 ページ: 641
10.1038/s41598-017-00219-3
Molecular and Cellular Biochemistry
巻: March ページ: 1-11
10.1007/s11010-017-2977-1