研究課題/領域番号 |
26430154
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
石井 恵子 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00291253)
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研究分担者 |
高見 誠一 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (40311550)
阿部 敬悦 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (50312624)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 酸化鉄ナノ粒子 / ステルス性 / 網内系捕捉回避 / MRI / がん組織指向性 |
研究実績の概要 |
本研究は、がんの診断や治療を目的として酸化鉄ナノ粒子を開発する中で、ナノ粒子が網内系に捕捉されるためにがん組織に集積しにくいという問題点を麹菌から精製したRolAを用いて解決しようとするものである。平成26年度はRolA自体の免疫原性とRolA被覆による免疫回避(ステルス)性を評価し、期待した結果が得られた。 (1) RolAの免疫原性の評価:マウス骨髄由来樹状細胞をRolAで24時間刺激した。炎症性サイトカインTNF-αが産生されなかったことから、RolA自体に免疫原性がないことが明らかになった。 (2) RolA被覆粒子の免疫原性の評価:マウス腹腔にRolA被覆粒子あるいは非被覆粒子を投与し、48時間後に腹腔内白血球を回収した。非被覆粒子投与マウスではリンパ球とマクロファージがPBS投与マウスの5~6倍に増加したが、RolA被覆粒子投与マウスでは差がなかった。非被覆粒子投与マウスではマクロファージ様細胞が鉄染色により染色された。これらの結果から、RolA被覆は免疫原性を持つナノ粒子をステルス化することが示された。 (3) MRIの撮像条件および解析方法の検討:酸化鉄ナノ粒子投与マウスのMRI撮像に適したT2強調画像において、色調変化が最大となるエコータイムは12秒であった。色調標準として4%アガロースを採用し、色調の数値化にはソフトウェアImage Jを用いて、ナノ粒子の組織集積を解析する系を確立した。 (4) RolA被覆粒子の網内系による捕捉回避の評価:マウス静脈にRolA被覆粒子あるいは非被覆粒子を投与し、2時間後にMRIでT2強調画像を取得した。非被覆粒子投与マウスでは網内系の肝臓および脾臓に粒子が集積し、非網内系の腎臓や筋肉には集積しなかった。肝臓での非被覆粒子の集積量はRolA被覆粒子の6倍であり、脾臓では2倍であった。これらの結果から、ナノ粒子のRolA被覆によるステルス化は網内系による捕捉を回避することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H26年度の計画では、RolAそのものとRolA被覆ナノ粒子の免疫原性を評価すること、およびMRIによるRolA被覆ナノ粒子のステルス性を評価することを目標としたが、すべての項目を実施し、良好な結果を得た。
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今後の研究の推進方策 |
RolA被覆によりステルス性ナノ粒子が得られたので、今年度以降はがん組織集積性を評価し、がん細胞指向性を付与したステルス性ナノ粒子の開発を行う。 (1) 担がんマウスの作製:マウス大腸がん細胞Colon-26、ヒト膵臓がん細胞AsPC1、およびヒト乳がん細胞KPL-4を適切なマウスの皮下に接種して、がん組織を形成させる系を確立する。 (2) EPR効果を最大化する粒子サイズの確定:種々のサイズのRolA被覆ナノ粒子および非被覆ナノ粒子を担がんマウスの静脈に投与後、MRI、鉄染色及び臓器内鉄量の測定によりがん組織への集積を評価し、最大のenhanced permeability and retention effect (EPR効果)を示す粒子サイズを確定する。 (3) がん細胞指向性ステルス性ナノ粒子の作製:乳がん細胞に高発現するHER2分子に特異的に結合する抗体pertuzumabのHER2結合領域を遺伝子工学的に作製し、6個のArgを介してRolA被覆ナノ粒子に結合させ、HER2に結合するステルス性ナノ粒子を作製する。得られた粒子のKPL-4細胞への結合を評価する。 (4) がん細胞指向性ステルス性ナノ粒子のがん組織集積性の評価:KPL-4を用いて作製したがん組織に乳がん細胞指向性ステルス性ナノ粒子を投与し、集積性を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度中に購入する予定の物品の国内在庫がなく、年度内に入手できなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
当該年度に国内在庫がないため購入できなかった物品を、次年度中に可能となり次第購入する。
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