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2015 年度 実施状況報告書

網内系に捕捉されることなくがん組織に集積するステルス性酸化鉄ナノ粒子の開発

研究課題

研究課題/領域番号 26430154
研究機関東北大学

研究代表者

石井 恵子  東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00291253)

研究分担者 高見 誠一  東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (40311550)
阿部 敬悦  東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (50312624)
研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワードナノ粒子 / 酸化鉄 / ステルス性 / がん組織指向性
研究実績の概要

ナノ粒子の技術開発が進み、医療への応用が期待されている。本研究は、magnetic resonance imaging (MRI)による診断や温熱療法の発熱体として利用可能な酸化鉄ナノ粒子をがんの診断や治療に応用するための開発を行う。しかしながら、静脈内に投与したナノ粒子が貪食細胞が豊富な肝臓や脾臓(細網内皮系)に捕捉され、目的の組織に送達されにくいことが問題となっている。実際に酸化鉄ナノ粒子をマウス腹腔内に投与すると免疫系が活性化されてマクロファージやリンパ球などが腹腔内に集積し、静脈内投与で網内系に捕捉されることが確認された。
これらの問題を解決するため、酸化鉄ナノ粒子のステルス化を試みた。麹菌Aspergillus orizaeが産生するRolAは両親媒性タンパク質であることからAspergillus属の免疫回避因子として機能していると推測される。そこで、RolAを大量産生して精製し、酸化鉄ナノ粒子の被覆に用いたところ、酸化鉄ナノ粒子の免疫原性及び網内系に捕捉される現象が抑制され、酸化鉄ナノ粒子がRolA被覆によりステルス化されたことが示された。
がん組織では新生血管の構造が正常組織に比べ粗造であることから、至適サイズの粒子は正常組織よりがん組織に侵入しやすい(enhanced permeability and retention effect: EPR効果)と考えられる。従って、ステルス化酸化鉄ナノ粒子において至適サイズを検討する必要がある。また、ナノ粒子をがん組織に滞留させるためには、粒子をがん細胞に直接結合させるactive targetingを考慮する必要もある。がん指向性のステルス性ナノ粒子が得られれば、難治性の深部がんや転移がんの診断および治療に寄与しうると考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成27年度は、RolA被覆ナノ粒子をがん組織に集積させる検討を行い、ほぼ予定通りに進行している。
1)がん組織集積性の評価:BALB/cマウスの皮下にマウス大腸がん細胞を移植し、約3週間後がん組織が0.5 mmから1 cmくらいになった時点で、20 nm, 40 nm, 200 nmの粒径のRolA被覆ナノ粒子を経静脈的に投与し、がん組織への集積をMRIで評価した。がん組織では正常組織より血管壁間隙が大きいことから、100 nm前後にがん組織のみに侵入する至適粒径があることが期待された。しかし、いずれの粒径の粒子もがん組織に集積しなかったことから、active targetingの必要性が考えられた。
2)がん細胞指向性分子の作製:RolA被覆ナノ粒子をがん細胞に結合させるため、ヒト乳がん細胞表面に多く発現するhuman epidermal growth factor receptor-related 2 (HER2)とそれを標的とする抗体ペルツズマブを利用した。抗体全体ではナノ粒子に結合させるには大きすぎるため、H鎖とL鎖の相補性決定部位(complementarity determining region: CDR)を1本のポリペプチド(single chain fragment variable, scFv)として作製する方法を取った。ペルツズマブのCDRアミノ酸配列からscFvの遺伝子配列をデザインし、His-tagを有する発現プラスミドに組み込んだ。プラスミドで形質転換した大腸菌よりHis-tag融合タンパク質(Ptm-scFv)を精製し、抗His抗体を用いたWestern blottingにより発現を確認した。

今後の研究の推進方策

平成28年度は、マウスに作製したヒト乳がん組織に特異的に集積するがん組織指向性ステルス性ナノ粒子の開発を行う。そのために以下の方法で研究を推進する。
1)Ptm-scFvの乳がん細胞結合性の評価:HER2高発現乳がん細胞にペルツズマブが結合すると増殖が阻害されることを利用して、Ptm-scFvにより増殖が阻害されるかを確認する一方、蛍光標識したPtm-scFvを用いて、結合量を直接測定する。
2)Ptm-scFvのステルス性ナノ粒子への結合性の評価:蛍光標識したscFvがステルス性ナノ粒子に結合しなかった量から結合量を評価する。
3)Ptm-scFv結合ステルス性ナノ粒子の乳がん細胞結合性の評価:Ptm-scFv結合ステルス性ナノ粒子を用いて、1)の系で評価する。
4)Ptm-scFv結合ステルス性ナノ粒子の乳がん組織集積性の評価:ヒト乳がん細胞KPL-4でヌードマウスに作製したがん組織に経静脈投与したPtm-scFv結合ステルス性ナノ粒子が集積するかをMRIを用いて評価する。

次年度使用額が生じた理由

海外輸入試薬が年度内に納入されなかったため。

次年度使用額の使用計画

海外輸入試薬の購入に充てる。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2015

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] Aspergillus oryzae由来RolAによる免疫回避とステルスナノ粒子開発への応用2015

    • 著者名/発表者名
      石井恵子、景澤貴史、渡邉祐里絵、松村香菜、笛未崎、小山内実、高橋徹、村垣公英、佐藤大貴、阿部敬悦、高見誠一、阿尻雅文、冨樫貴成、川上和義
    • 学会等名
      第26回日本生体防御学会学術総会
    • 発表場所
      東京(台東区生涯学習センター ミレニアムホール)
    • 年月日
      2015-07-10 – 2015-07-12

URL: 

公開日: 2017-01-06  

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