研究課題
がん細胞に選択的に感染・融解し、治療用外来遺伝子を発現する腫瘍融解ウイルスを臨床応用するためには、効率性と安全性が求められる。染色体への組込みを起こさないRNAウイルス(SIN)を、より安全性の高い腫瘍融解ウイルスとするために、ヘルペスウイルスtk遺伝子をSINに組込み、ガンシクロビル(GCV)により増殖抑制可能な腫瘍融解RNAウイルスの開発を本研究の目的とした。本研究では、ウイルスの3’末端に付加したサブジェノミックプロモーター(sgPr)よりtkを発現するSINsgtk、カプシド遺伝子(C)とエンベロープタンパク質遺伝子(E2)間にtkとGFPのキメラ遺伝子を挿入したSINtkGFP、E2に1アミノ酸変異を持つSINtkGFPmE2、およびnsp3とtkのキメラ遺伝子を持つSINtkmE2を作製することに成功し、これらのtk発現組換えSINを用いてGCVに対する感受性について検討を行った。その結果、SINtkGFPmE2が最も安定した組換え体ウイルスであり、GCVによりウイルスの増殖が抑制されることを確認した。また、GCV添加によるウイルスの増殖抑制と共に見られる細胞毒性は、正常細胞のVero細胞では低い一方で、癌細胞のHeLa細胞で顕著であることを見出した。この現象は、腫瘍融解ウイルスとして好ましい性質であるが、癌細胞であるHeLa細胞においてSINの複製・発現が高いことによりtkの発現が癌細胞において高いためであると考えられた。一方で、tkが組込みこまれたSINは野生型SINと比較して不安定であることが明らかとなり、増殖安定株の選択を試み、E2に1アミノ酸変異を持つ変異体のクローニングに成功した。この変異を持つSINtkGFPmE2およびSINtkmE2を得たが、SINtkGFPmE2のみが安定した株となり、tk発現SINの安定性が今後の課題となった。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (3件)
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