研究課題
tRNAはDNAから転写されるが、転写された直後のtRNA前駆体には、その3’末端に成熟tRNAには見られない伸長配列が存在する。tRNA前駆体3’末端の伸長配列がtRNase Zなどのエンドヌクレアーゼによって除去されることにより成熟tRNAとなる。tRNase Z によるtRNA前駆体の切断に関するメカニズムとその標的mRNA切断への応用については、我々の共同研究グループ(代表:梨本正之)が明らかにした。今回の検討の目的は、ヘプタマーsgRNAを用いて腫瘍抗原等のmRNAを阻害する方法が、各種の腫瘍細胞に対する治療法として応用可能であることを明らかにするとともに、sgRNAによるmRNA切断法を効果的に応用できる腫瘍抗原等の分子を選択し、かつsgRNAの最も効果的な塩基配列を決定することである。臨床応用に関する検討いついては、白血病をはじめとする腫瘍細胞の培養系およびマウスゼノグラフトモデルを用いて行っている。数種類の白血病細胞株に対するヘプタマーsgRNAの有効性をin vitiroとin vivoで確認することができた。
2: おおむね順調に進展している
sgRNAの腫瘍細胞のapoptosis誘導効果は、代表的な造血器腫瘍細胞株である急性前骨髄球性白血病細胞株HL-60、多発性骨髄腫細胞株RPMI8226、慢性骨髄性白血病赤白血病型急性転化細胞株K562において確認することができた。その他の白血病細胞株を用いて同様の検討を行いその再現性の確認を行っている。また、実際の白血病細胞株を用いた検討の前に、有効なsgRNAの種類をスクリーニング中である。マウスゼノグラフト系での検討は主に共同研究者の梨本が行い、有効性を確認し、論文報告をした。
前述のように、標的白血病細胞株をさらに増やして、sgRNAによる腫瘍細胞増殖抑制効果を追求する。また、複数のsgRNA を用いることによる、相乗効果の有無を検討する。
26年度は、これまで開発したsgRNAの再スクリーニングを行ったこと、マウスゼノグラフトモデルを用いた検討は主に共同研究者が行い、その結果の評価と論文報告に期間を充てたこと、当研究室での新たなsgRNAの作成は27年度に行う方針になったこと による。
ゼノグラフトモデルにおける有効性が確認されたので、sgRNAによる各種腫瘍細胞の細胞増殖抑制およびアポトーシス誘導についての検討を、主にin vitiroの系でさらに追求する。各種の白血病細胞株に網羅的に腫瘍関連抗原のsgRNAを加えて培養し、RT/RQ-PCRを用いて、sgRNAを添加培養した白血病細胞の当該遺伝子のmRNA発現の阻害を確認するとともに、Western blottingおよびフローサイトメトリーを用いて、培養細胞の当該タンパク発現の阻害を確認する。次にsgRNAを添加して培養した実際の白血病細胞についてMTTアッセイによる細胞増殖の抑制やAnexin V/7AAD染色した培養細胞をフローサイトメトリーで解析することにより、sgRNAを介したアポトーシスの誘導について検討する。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Leuk Research
巻: 38 ページ: 808-815
10.1016