研究課題
がん病態においては慢性的な炎症を惹起することで免疫応答ががん進展に寄与している側面も持ち合わせる。QR32細胞は正常同系マウスであるB6マウスでは皮下移植の後に自然退縮するが炎症により悪性化進展し造腫瘍性と転移能を獲得する。このQR32を用いたがん悪性化進展モデルにおいて、これまでにQR32の悪性化進展にIL-17を介した免疫応答が非常に重要である事、IL-17産生細胞としてγδT細胞が炎症の起点となりうる事を報告した。そこでQR32の悪性化進展に関わるγδT細胞の特徴について、mRNA発現解析ならびに細胞表面マーカー解析を行い、さらにIL-17産生に関わるメカニズムの解析をKOマウスを用いた解析、ならびに抗体によるブロッキング実験により行った。QR32の悪性化進展に関わるIL-17産生γδT細胞としてVδ1 T細胞を同定した。Vδ1 T細胞はこれまでに報告されている胸腺内でpre-programされる事でIL-17を産生するgdT細胞サブセットと同様の特徴を示した。Vδ1 T細胞はTNFRSFに属する分子の発現に特徴を示し、Vδ1 T細胞に選択的に発現するTNFRSF分子としてCD30を同定した。CD30のリガンドであるCD30L/CD153に対するモノクローナル抗体投与によって、腫瘍局所でのIL-17産生の抑制、さらにはがん悪性化進展の阻害が可能である事を示した。以上の結果から、Vδ1 T細胞の機能をターゲットとした炎症制御が、がん進展をターゲットとした新規治療となり得ると考えられる。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
Cancer Science
巻: 107 ページ: 1206-1214
10.1111/cas.13005