研究実績の概要 |
我々は肺癌細胞における増殖因子受容体cMetと核内DNA複製酵素のTopoisomeraseI(TopoI)の関連について検討した。検討に用いたのは10種類の肺癌培養細胞株(PC-9, PC-9/Met, H1975, A549, H358, EBC-1, H441, H1993, H596, H2228)である. まずcMet蛋白発現、リン酸化をWestern blot法で検討したところ、5細胞株(PC-9/Met, EBC-1, H1993, H441, H2228)でcMet高発現、Metのリン酸化亢進を認めた。その他の5種類ではcMet発現は弱くリン酸化も低かった。核内のTopoI発現・活性を検討したところ、前者のcMet高発現細胞株群ではTopoI蛋白発現が高く、活性も亢進していた。TopoI阻害剤であるSN38に対する感受性はcMet高発現細胞群で高い傾向にあった。ここの細胞を別々に検討してもこの傾向は認められた。さらにcMet発現とリン酸化Metには強い関連が認められ、リン酸化MetとTopoI発現にも弱い関連が認められた。TopoI活性とcMet発現には関連は認められなかった。HGFはcMetのLigandである。PC-9, PC-9/Met, A549, EBC-1細胞株にHGFを添加した実験では、Metリン酸化亢進が認められた。またMet阻害剤(SU11274)でHGF刺激によるMetリン酸化がキャンセルされた。この現象はcMet発現状況に関わらず認められた。一方 TopoI発現はSU11274処理により低下する傾向が認められたが、HGF刺激ではわずかに亢進したのみであった。 現在までの検討ではcMetとTopoIの間には関連が認められそうである。cMetがTopoIを制御している可能性は高いがTopoI活性制御にはまだいくつかのステップがあることが示唆される。今後下流シグナルの解析を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
27年度以降の検討として、下記を予定している。すなわち、TopoI活性に影響している因子として、近年同定されているのがCK2、p14ARFである (。我々はEGFR-TKIの長時間の暴露によりCK2がupragulationされるというpreliminaryな結果を得ている。cMet高発現株群でCK2やp14ARFを介してTopoI活性を制御しているかを探索する。またcMetを刺激した場合のCK2, p14ARFの変化を確認する。さらに下流シグナルの解析を追加するためHGFによるMet刺激、阻害剤によるMet阻害状態でのシグナルアレイを用いて解析を追加する。また各細胞株からmiRNAを抽出する。現在までにTopoIと関連が報告されているmiRNAはmiR-24, miR34c, miR458, miR208bなどがあり、cMetと関連するものとして、miR-34a,b,c,miR-27a, miR-31など多く報告されている。PC-9,A549,PC-9/Met,EBC-1を用いて安定状態における網羅的なmiRNA arrayを用いる
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