研究課題
我々は肺癌細胞における増殖因子受容体cMetと核内DNA複製酵素のTopoIの関連を検討した。用いたのは10種類の肺癌培養細胞株である。cMet蛋白発現、リン酸化をWestern blot法で検討したところ、5細胞株でcMet高発現、Metのリン酸化亢進を認めた。他の5種類ではcMet発現は弱くリン酸化も低かった。核内のTopoI発現・活性はcMet高発現細胞株群ではTopoI蛋白発現が高く活性も亢進していた。SN38に対する感受性はcMet高発現細胞群で高い傾向にあった。cMet発現とリン酸化Metには強い関連が認められ、リン酸化MetとTopoI発現にも弱い関連が認められた。HGFの添加実験で、Metリン酸化亢進が認めら、Met阻害剤(SU11274)でHGF刺激によるMetリン酸化が阻害された。この現象はcMet発現状況に関わらず認められた。TopoI発現はSU11274処理により低下する傾向が認められたが、HGF刺激ではわずかに亢進したのみであった。下流シグナルの変化を検討する目的で、HGF刺激、Met阻害剤の添加のあるなしでパスウェイ解析を行ったところ、TopoI発現に関連する29の候補遺伝子を同定した。臨床検体を用いた解析では小細胞肺癌78例の腫瘍組織を用いて、cMetは37.7%、pMetは29.3%、TopoIは51.3%の症例でそれぞれ陽性であった。TopoIの蛋白発現とpMetの間に有意な相関が認められた。これは細胞実験と合致する。cMet蛋白発現陽性症例と陰性症例では全生存期間に差が見られ、cMet陽性症例の予後は有意に不良であった。(論文作成中)。本研究から増殖因子受容体cMetがTopoIの発現を調節している可能性が強く示唆され、今後の治療戦略構築に重要な知見をもたらすと考える。
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