研究実績の概要 |
EGFRチロシンキナーゼ阻害薬であるエルロチニブは、EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺癌に対して高い奏効率を示すが、EGFR遺伝子変異が陰性の患者に対しても一定の奏効率(約10%)を示す。エルロチニブが奏効するEGFR遺伝子変異陰性の患者群を選別するためのバイオマーカーを同定するために本研究を立案した。申請者らが実施したEGFR遺伝子変異陰性の進行・再発非小細胞肺癌に対するエルロチニブの有効性および安全性の検討(第Ⅱ相試験)に参加した患者の腫瘍組織を用いた、先行して主要ながん遺伝子であるEGFR遺伝子増幅, c-Met遺伝子増幅, K-ras遺伝子を測定しエルロチニブの臨床効果との関連を解析した。EGFR遺伝子変異は解析可能であった57例中20例で増幅を認め、c-Metは56例中11例で増幅を認めた。K-ras遺伝子変異は52例中12例で陽性であった。c-Met遺伝子増幅陰性群でエルロチニブの病勢制御率が高く、無増悪生存期間は長い傾向を認めた。次に次世代シークエンスによる解析を行った。全ゲノム解析は腫瘍より抽出し保存されたDNAの残量より実施不能であったため、肺癌関連の15の遺伝子(AKT1, GNA11, NRAS, BRAF, GNAQ, PDGFRA, EGFR, KIT, PIK3CA, ERBB2, KRAS, RET, FOXL2, MET, TP53)のターゲットパネル(TruSight Tumor 15)による解析を行った。次世代シークエンスによる解析は17例のみで可能であった。遺伝子変異はTP53のみで10例で認めた。先行して行ったdirect sequenceでは次世代シークエンスを行なった17例中3例でK-RAS遺伝子変異を認めていたが次世代シークエンスでは検出されなかった。TP53遺伝子変異とエルロチニブの効果に相関は認められなかった。
|