研究課題
免疫機能の低下は、がんや、感染症等に対する生体防御機構を妨げ、それらによる死亡率を増加させる要因となり、担癌個体における免疫機能の低下のメカニズムの解明は、がんを制圧するための免疫療法の開発する上での急務である。しかし、担癌個体での免疫機能の低下のメカニズムは多段階的であり、未だ全容は不明である。本研究課題では、担癌個体においてCD4+T細胞の機能分化が抑制される機序について検討した。そして、担癌個体において増加する可溶性IL-6受容体(sIL-6R)が、IL-6と協調してしてCD4+T細胞に作用し、腫瘍特異的IFN-gamma産生性Th1細胞の分化を抑制することを見出した。さらに、これは、腫瘍特異的CD8+T細胞の誘導を阻害し、結果的に担癌個体では抗腫瘍効果が減弱する、という免疫抑制機序を明らかにした。また、IL-6/sIL-6Rによる腫瘍特異的CD4+T細胞のTh1細胞分化抑制には、IL-4/IL-21産生を制御する転写因子であるc-Mafが主要な働きをしていることを、c-Maf変異マウスの解析により、明らかにした。これらの結果は、担癌個体において、IL-6/sIL-6Rが、がんに対する免疫療法の感受性低下を是正するための有望な標的となりうることを示唆し、がん免疫療法の効果増強を目指したアプローチへの基盤的知見を与え得るものであると考えられる。この研究成果は、学術雑誌Cancer Research (In press, 2017.)に発表した。来年度以降も、これらの研究成果を発展させ、さらにがんに対するCD4+T細胞の免疫応答について解析を進める予定である。
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Cancer Research
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In press
International Journal of Molecular Sciences
巻: 18 ページ: -
doi:10.3390/ijms18030666