研究課題
STX化合物は我々が見出した経口投与可能な新規STAT3阻害化合物である。STAT3のSH2ドメインに作用し二量化を阻害することによってその機能を抑制するユニークな薬剤であり、がん治療薬だけでなくリウマチなどの自己免疫疾患治療薬としても期待される。本研究ではSTAT3阻害剤開発のための基盤研究として、細胞系及び非細胞系での評価系を確立し、STX化合物をはじめとしたSTAT3阻害化合物の評価を実施した。培養細胞レベルでの免疫染色および定量リアルタイムPCR実験から細胞内STAT3の核内移行を阻害しSTAT3によって転写が誘導される抗アポトーシス因子の発現を低下した。また興味深いことにSTX化合物はがん細胞株においてIFNγで惹起されるPD-L1やIDO1の発現を濃度依存的に低下させることも判明した。さらに、キナーゼ阻害剤ライブラリーを用いた解析から、複数のセリン・スレオニンキナーゼがSTX化合物の感受性に影響を与えることも明らかとなった。具体的には一次アッセイとして用いたルシフェラーゼレポーター遺伝子アッセイによる併用係数の算出によって、特定のシグナル伝達をブロックするキナーゼ阻害が、STX化合物との相乗または相加的な併用効果を示すことを明らかとした。また特定のシグナル伝達阻害化合物についてはさらに乳がん細胞株を用いた評価にといても低併用係数を示したことから、これらのキナーゼ阻害剤は併用薬として期待されるだけでなく、本シグナルがSTAT3阻害に対する耐性と関わっていることが示唆される。また、siRNAライブラリーを用いて、ノックダウン効果によってSTX化合物の効果を変化させる候補遺伝子を複数同定した。これらの知見はSTX化合物の免疫チェックポイントに対する抑制作用を示唆しており、将来的に臨床応用していくための分子基盤として重要な知見と考えている。
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