本研究の主要な目的であるモガムリズマブ皮膚障害の病態解明について、研究の手順をi)皮膚障害発症例と非発症例のPBMC解析 ii)皮膚障害モデルマウス作製 iii)患者検体およびマウス検体の遺伝子的な解析 の3段階と定めて研究を開始した。まずPBMCの解析については、他施設共同臨床試験である「成人T細胞白血病リンパ腫に対するモガムリズマブ治療中の免疫モニタリング」MIMOGA studyの検体を用いて解析をおこなった。臨床試験登録開始から平成29年3月までに96例の登録を得た。そのうちCRFが得られて解析可能な70例でのデータでは、grade3以上の皮疹を発症した症例が15例あり、皮疹を発症しなかった症例と比較して予後良好な傾向が見られた。PBMCの解析ではCD4、CD25、CCR4等のATL特異的な表面マーカーや、Foxp3による制御性T細胞(Treg)の解析、そしてHTLV-1の蛋白Taxに対する特異的な細胞障害性T細胞(CTL)の検出などをおこなったが、皮疹発症例と非発症例で顕著な相違はみとめなかった。しかし今後grade1-2の皮疹症例についてもCRFを新たに追加する予定であり、比較的軽症例も含めた皮疹発症例での免疫学的特徴を探索する予定である。また、皮膚障害モデルマウスについては、皮膚障害を発症した複数の患者検体を免疫不全マウスであるNOGマウスに移植したが、皮疹の再現に至らず、モデルマウス作製に至らなかった。原因としてヒトとマウスの免疫系の相違、モガムリズマブ皮疹発症に関わる免疫担当細胞がNOGマウスで欠損している可能性などが考えられた。また遺伝子的な解析についてはモデルマウスが作製できておらず患者検体でのみ行ったが、アポトーシスに関与する分子PANX1の発現に差がある傾向がみられたがまだ少数例での検討であり、今後軽症例も含めた多数例での解析を行う予定である。
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