研究課題/領域番号 |
26430168
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
大嶺 謙 自治医科大学, 医学部, 講師 (90316521)
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研究分担者 |
塚原 智典 自治医科大学, 医学部, 講師 (10362120)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 遺伝子改変T細胞療法 / CD19抗原 / 細胞老化 / 細胞疲弊化 |
研究実績の概要 |
1. 臨床研究で用いる手法と同様の方法で前臨床の検討を行った。悪性リンパ腫患者の末梢血から分離したTリンパ球にキメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor : CAR)を遺伝子導入した(CART)。患者Tリンパ球をOKT3およびレトロネクチン存在下にて3日間培養した後に、レトロネクチン法にてCAR遺伝子を導入し、10日間まで培養増幅した。この患者由来CART作成過程におけるCAR遺伝子導入効率とCARTの増幅を検討し、健常人のTリンパ球から作成したCARTのデータと比較した。その結果、導入効率については差を認めなかったが、細胞増幅能が患者由来細胞において有意に低下していた。この増殖能は各患者間においても差を認めたが、既治療や臨床検査データ等の臨床背景との関連性については明らかでなかった。また、CD19陽性リンパ腫細胞株Rajiを用いたin vitroにおける細胞傷害活性についても検討したところ、患者群と健常人群のCARTにおいて差を認めなかった。 2. 平成26年3月4日付けで厚労省より遺伝子治療臨床研究「CD19特異的キメラ抗原受容体発現Tリンパ球を用いた難治性B細胞性悪性リンパ腫に対する遺伝子治療臨床研究」が認可され、臨床研究が開始された。既に患者登録が行われている。患者Tリンパ球から作成したCARTについて品質試験を行ったところ、研究計画書に記載した基準を満たしていることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究概要に記したように平成26年3月臨床研究が認可されたが、同月、我々と共同研究を行っている米国メモリアル・スローンケタリング癌センター(MSKCC)にてCARTを用いた遺伝子治療臨床試験中に、有害事象による患者死亡例が発生した。このため当院においても有害事象対策を見直すことになった。研究代表者がMSKCCにおいて研修を行うと共に、改めて院内関係部署との連携確認を行った。また研究計画書の修正を行い、学内倫理委員会に諮問、更に厚労省へ再提出した。平成26年12月2日この実施計画書が認可された。 このように臨床研究の開始が遅れることになった。 一方、前臨床研究については研究概要に示したように順調に推移している。
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今後の研究の推進方策 |
保存している患者および健常人由来のCARTを用いて、in vitroにおけるCARTとCD19発現標的細胞との共培養による疲弊化(exhaustion)および老化(senescent)分子マーカー誘導の有無をフローサイトメトリー(FCM)を用いて検討する。また、臨床研究の残余検体を用いてFCMおよびBio-Plexによる疲弊化および老化関連分子について検討する。 臨床研究については引き続き患者登録を継続し、安全性と抗腫瘍効果の評価を行う。また、海外おける臨床試験の動向にも注目し、最新の情報を入手することに努め、特に安全性に配慮しながら遂行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
「現在までの深達度」の欄に記したように、臨床研究の遂行が遅れた。
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次年度使用額の使用計画 |
現時点で、臨床研究が開始されており、順調に患者登録が行われている。今後、予定されていた解析が行われることから、平成26年度分の使用額を平成27年度以降にまわすことにした。 また、海外の臨床試験における重篤な有害事象の報告が相次いでいることから、その情報収集も重要である。関連学会出席のための旅費などに使用する予定である。
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