研究課題
自治医科大学附属病院にて「CD19特異的キメラ抗原受容体(CAR)発現Tリンパ球を用いた難治性B細胞性悪性リンパ腫に対する遺伝子治療臨床研究」を遂行中である。これまでに6例の非ホジキンリンパ腫患者を登録した。被験者の末梢血を採取し、院内の細胞プロセシング室においてレトロウイルスベクターを用いてCAR-T細胞を作製した。以下に登録症例6例のCAR-T細胞に関する研究データを示す。年齢中央値は63歳 (55歳~68歳)、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫2例、濾胞性リンパ腫からの形質転換2例、リンパ芽球性リンパ腫1例、遺伝子導入効率は49.7% (31.3~57.9%)、CAR-T作製後の細胞生存率は中央値87.4% (80.6~92.2%)、CAR-T機能をin vitroにおける細胞内IFN-γ産生能にて評価したところ中央値46.6% (27.6%~59.6%)であった。全例で1 x10 e6/kgの輸注予定細胞数を得ることが可能であった。品質試験を行った後に、2例でシクロフォスファミドによる前処置化学療法の後にCAR-T細胞の輸注を行った。輸注した2例の末梢血中のベクターのコピー数をQ-PCRにてモニタリグした。1例では輸注後、コピー数の一過性の増加を認めた。ベクターコピー数の増加時には、CAR-T細胞が放出したと考えられる血清サイトカインの上昇とサイトカイン放出症候群の臨床所見を認めた。研究計画書に基づき、輸注前後の末梢血検体を調整し保存し、体内におけるCAR-T細胞の動態と疲弊化および老化分子の関連性についての検討を行っている。
3: やや遅れている
H27年11月に「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」に即した提供計画の提出に関する経過措置期間が終了したため、改めて研究計画書を提出し、H28年2月25日に厚労大臣から同計画書の承認を得た。現在までに6例の非ホジキンリンパ腫患者の末梢血からCAR-T細胞を作製し、2例に研究計画書に基づいてCAR-T細胞の輸注を行った。種々の要因により、GMPグレードのCAR-T細胞作製過程が滞っており、臨床試験の遂行が遅れている。そこで、健常人ボランティア5例と上述の臨床研究対象患者とは別に非ホジキンリンパ腫患者7例の末梢血からCAR-T細胞を作製してin vitroにおける増殖能と腫瘍細胞との共培養による細胞障害活性能について検討を行った。今後、これらの検体も用いて、養子免疫遺伝子療法で用いる細胞における疲弊化および老化分子の発現の解析を行う。
解析対象の患者検体が十分に得られていないことが、課題のひとつである。臨床研究計画書の見直しを行い、対象患者の組み入れの拡大を図り、実現可能な計画とする予定である。現在まで得られている臨床検体に加え、通常の化学療法や造血幹細胞移植施行患者から得られた検体についても解析対象とし、さまざまな治療を受けた造血器腫瘍患者におけるT細胞の疲弊化および老化関連分子の解析を行う。本年度から本学附属病院にて新たなCD19-CAR遺伝子治療の臨床試験が開始される。この臨床試験の被験者検体を用いた解析も行う予定である。また、最近、注目されている養子免疫療法における用いるために適切な細胞を見いだすことを目的として、T細胞サブセット別の解析を加える予定である。
研究の主要内容に、研究者が実務を担当している臨床研究の被験者検体を用いた解析がある。現在までのところ、登録患者のコンディションやCAR-T細胞調製機関のスケジュール調整等により治療完遂例は2例に留まっているため、通常の化学療法や造血幹細胞移植施行患者から得られた検体についても解析対象として予定とした。また本年度から本学附属病院にて新たなCD19-CAR遺伝子治療の臨床試験が開始される。この臨床試験の被験者検体を用いた解析も行う予定であることから、次年度にも使用額が生じた。
臨床研究計画書の見直しを行い、対象患者の組み入れの拡大を図る。上述のように、現在まで得られている臨床検体に加え、新たに通常の化学療法や造血幹細胞移植施行患者、新規に開始される遺伝子治療臨床試験の被験者から得られた検体を用いてCAR-T細胞を作製し解析対象とする。
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すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 5件)
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