自治医科大学附属病院にて「CD19特異的キメラ抗原受容体(CAR)発現Tリンパ球を用いた難治性B細胞性悪性リンパ腫に対する遺伝子治療臨床研究」を遂行中である。これまでに7例の非ホジキンリンパ腫患者を登録した。被験者の末梢血を採取し、院内の細胞プロセシング室にてレトロウイルスベクターを用いてCAR-T細胞を作製した。 以下に登録症例7例のCAR-T細胞に関する研究データを示す。年齢中央値は58歳 (43歳~68歳)、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫3例、濾胞性リンパ腫からの形質転換2例、リンパ芽球性リンパ腫1例、遺伝子導入効率は49.5% (31.3~57.9%)、CAR-T作製後の細胞生存率は中央値89.5% (80.6~94.3%)、CAR-T機能をin vitroにおける細胞内IFN-γ産生能にて評価したところ中央値43.8% (27.6%~59.6%)であった。検討した全例で1 x106個/kgの輸注予定細胞を得ることが可能であった。3例に対しシクロフォスファミドによる前処置化学療法後にCAR-T細胞の輸注を行った。うち1例では輸注後28日目に画像診断上、腫瘍量が50%以下まで減少するなど臨床的な効果を認めた。CAR-Tの輸注を行った3例における輸注前後の末梢血検体を調整・保存し、体内におけるCAR-T細胞の動態の検討を行ったところ、いずれの症例も末梢血中のCARベクターのコピー数が一過性に上昇し、その後検出限界値以下となった。本臨床試験の治療効果の評価は今後行われるが、輸注したCAR-Tの末梢血における長期の存続が得られておらず、CAR-Tの治療効果を高めるためには、何らかの工夫が必要と考えられる。
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